日本の中小企業では、かねてより深刻な「後継者不足」が叫ばれています。望まぬ廃業を防ぐためには、「事業承継」の準備が必須です。永田町司法書士事務所代表である加陽麻里布氏が、中小企業の代表者であれば知っておきたい事業承継の手順やポイントについて解説します。

把握しておきたい事業承継までの「3ステップ」

次に、事業承継までの流れを説明します。

 

後継者候補の「決定」

まず、後継者候補を決定します。事業承継を決意したら、まず社内に後継者候補を決定したことをアナウンスします。

 

会社の顧問税理士や顧問会計士、専門家にも相談を行い、税務上の問題・スキーム等を一緒に検討していく必要があります。

 

後継者候補の「育成」

そのあと、後継者候補を育成します。この育成というのはだいたい5年ほどかかるといわれており、後継者候補の方には営業・現場・企画・経理・人事などそれぞれの業務経験を積んでいただく必要があります。

 

後継者に交代

一通りの経験を積んだらいよいよ、後継者を役員など責任のあるポジションに就かせることになりますが、当然役員就任後も後継者と先代が一緒に会社を経営していく必要があります。

 

役員就任直前になると、後継者候補は「社長室長」などの肩書で一緒に仕事をしていきますが、そのあとも会長はすぐに会社経営から身を引くのではなく、5年、10年とアフターフォローしていき、そこでやっと「承継」となるのが一般的です。

 

とにかく事業承継というのは「時間がかかるものである」ということをぜひ知っていただきたいと思います。

親族内で承継する場合は承継者を「必ず1人」に

事業承継では、従業員のなかから後継者を選ぶこともあれば、自分の息子に継がせる場合もあります。自分の息子に会社を継がせる場合の注意点としては、株式を事業承継する場合は一緒に承継させていくのが一般的なのですが、この承継者を「必ず1人にする」ということです。

 

事業承継の相談や失敗談としてよく聞くのが、「均等に株式を分けてしまい、経営が不安定になる」というものです。兄弟で会社を継がせる場合、単純に長男を社長、次男を専務などと肩書きで役割分担をしてしまうと、のちに金銭的なトラブルの原因になります。

 

この役割分担というのは、「長男は管理部門」「次男は営業部門」というようにざっくり大きく分けていくのがいいでしょう。

 

それから、よく親族内承継で相談にあるのは「子供が会社を継ぎたがらない」というものです。やはりこれは「会社を継ぎたい」と思わせるような事業経営というのが重要になってくると思います。

M&Aは「最後の選択肢」

そして事業承継といえば「M&A」というのも実は選択肢のひとつとしてよく挙げられます。しかし、この第三者への売却に関しては、「最後の選択」と考えるべきです。

 

事業承継が難しい場合、当然会社を売却することを検討します。親族のなかでも会社を継ぎたい者がいない、従業員にも継がせる適正者がいないという場合には外部から買い取ってくださる方を探すことになります。

 

しかし、M&Aというのは株式を譲渡する方法で行うのが一般的です。一度経営権を失った場合、会社がその後どうなっても文句はいえないものですので、業態がまったく別のものに変えられてしまったり、積み上げてきたものがなくなってしまう可能性もあります。

 

「買い手と売り手で経営理念を引き継げるのか」といったビジョンも共有し、納得のうえで行うべきです。

 

<<<事業承継の詳しい方法を司法書士が動画で解説>>>

 

 

加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士

 

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