仕事と介護を両立させるための「法律」「制度」
安藤さん「介護のために仕事を辞めると、えらいことになる!というのはわかりました。でも、介護のために休んだり、遅刻したりが増えると、仕事でかかわる周りの人たちに迷惑をかけそうな気が…。」
太田先生「はい。会社に迷惑をかけるからと、離職を決意する人もいるようです。でも、仕事をサボっているわけではないですから、まずは上司に相談してみるなど、とにかく介護についてオープンにすることが大切です。」
安藤さん「介護って、ネガティブなイメージがあるから、人に言いにくい気がしますが、思い切ってオープンにすることが大切なんですね。」
太田先生「それに、日本では、介護を理由に仕事を休めることが法律で定められているんですよ。」
安藤さん「法律で決まっているんですか! 知らなかった!」
■絶対に覚えておきたい「2つの制度」
太田先生「絶対覚えておいて欲しい制度として、主に2つの制度があります。1つ目は『介護休業制度』。介護対象者1人につき、通算93日までお休みすることができます。原則、2週間前までに書面などで勤務先に申請することで、使えるようになります。93日連続で休むこともできるし、上限3回まで分けて使うこともできます。
2つ目は『介護休暇制度』で、介護対象者が1人なら、年5日、2人以上なら、年10日までとることができます。介護休暇は、会社に『休ませてください!』と申し出れば使うことができ、時間単位でとることもできます。
どちらも、必要な勤続期間を満たせば(図表3参照)パートやアルバイトでも使うことができます。」
安藤さん「介護で仕事を休める法律。なんだか心強い!」
太田先生「そうですよね。その法律は、『育児・介護休業法』として定められていて、時短勤務や残業の免除、フレックスタイム制の導入など、さまざまな働き方をしながら、仕事と介護を両立できるように、国も会社も応援しています。」
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<その他介護で仕事を休める法律>
●時短勤務(1日6時間勤務など)
●フレックスタイム制
●時差出勤
●残業の免除など…
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安藤さん「育児も介護も同じ法律で、仕事との両立を目指せるように決まっているなんて知らなかったです。」
太田先生「会社によっては、法律以上に介護のための制度を充実させているところもあります。一度、自分が働いている会社の制度を確認してみましょう。おトクな制度があるかもしれません。
たとえば、会社の福利厚生で介護の補助金を出してくれるところや、遠距離介護の交通費を補助してくれるところもあります。黙っていないで、会社に報告して、可能な限りおトクな情報を入手するようにしてください。」
安藤さん「介護でお休みするのも、出産や育児でお休みすることみたいに普通になるといいですよね。でも、93日間の介護休業って、なんとなく、短いような気がしますが…。」
太田先生「確かに、とても93日で介護が終わるとは考えにくいです。でも、介護休業の本来の使い方は、『自分が介護をするための休暇』というわけではなく、親の介護をマネジメントする期間に使うことが本来の目的です。」
安藤さん「『マネジメント』! たしか、身の回りのお世話をすることではなく、適切なサービスを受けられるよう環境を整えていくことですよね。」
太田先生「そうです! たとえば、93日のお休みを3回に分けて使えるのですから、1回目は、介護サービスに慣れるまで様子を見守るために使って、2回目は、施設介護を検討するときに一緒に施設探しをする。3回目は、看とりのとき、最期のときは、そばにいられるようにするなど、それぞれ1ヵ月間ずつ休むようにするなどの使い方もあります。
介護がはじまった!と慌てて、身の回りのお世話のために93日間がっつりお休みして、つきっきりで介護をしても、親の状態が良くなるわけではありません。長期間の介護を続けられるように、体制を整えたり、適宜調整したりするときに使うほうが、有効的な使い方だと思います。」
安藤さん「介護休業の使い方でも、使い方を間違えるとせっかくのお休みが無駄になってしまうから、気を付けるようにしないと。はじめに理解しておくってやっぱり大切ですね。」