(※画像はイメージです/PIXTA)

現在の法律では、離婚直後に別の男性との子を出産した場合、元夫の子と見なされてしまいます。それを避ける目的で、女性が出生届を提出しないことがあり、戸籍の記載がない「無戸籍」の子を生じる原因となっていると考えられてきました。これを受け2月に法制審議会でまとめられた「嫡出推定」制度を見直す民法改正の要綱案について、多くの家事裁判を担当してきた水谷江利氏が、「再婚禁止期間の短縮」と絡めながら解説していきます。

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2016年の改正で、女性の再婚禁止期間短縮も…

2015年12月16日に最高裁違憲判決が出たのち、2016年6月、女性の再婚禁止期間を離婚から6か月としていたのを100日に短縮する民法改正が行われました。

 

再婚禁止は、その期間に子どもが生まれた場合、だれの父の子であるかという父性の推定が重複することを回避するための期間を設けることに意味がありました。

 

しかしながら、医療や科学技術が発達し、DNA検査もしやすくなった現在では、父性の推定が重複する期間は、仮にあったとしても離婚後100日程度に過ぎないのに、これを超えて再婚を禁止するのは合理性を欠いた過剰な制約を女性にのみ課すものだとして、民法改正に至ったものです。

 

逆に言えば、再婚禁止期間がかつて6か月とされていたのは、この期間に生まれた子については、前の夫の子であるという推定がはたらきうると考えられていたからでもあります。

 

これだと、離婚する3~4ヵ月前までは前婚の夫との間に性的関係があることが前提となりますが、夫婦が破綻したことを理由として離婚する場合にあまり現実的なことでもありません。

 

一方で、なぜかこれを上回るその推定を定めていたのが、今回改正の対象となっている民法722条2項でした。同条は、婚姻解消から300日以内、つまり10ヵ月内に生まれた子は前婚で懐胎(=妊娠)したものと推定する、とされていました。そうすると、離婚するそのときまで、前婚の夫と性的関係があった可能性があるということになってしまいます。

 

そう考えると、再婚禁止を6か月から100日に縮めながら、引き続き離婚後300日以内は前の夫の子、というのはやはりおかしいということになります。

改正により、結婚・再婚後に生まれた子は現夫の子に

なお、実際には、これまでも、法務省民事局長平成19年5月7日付通達により、離婚後300日以内の子であっても、医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」を添付して提出された場合には、離婚前の夫は父としない運用がとられてきていました。

 

そこで、今回の改正案は、生まれた子が前の夫の子と推定されるべき期間を再婚禁止期間に合わせて100日とすることにとどまらず、結婚・再婚後に生まれた子を新たな夫の子とするとともに、そもそも再婚禁止の規定も削除してしまおうということになっています。

 

そもそも、「届け出られた子が誰の子か推定する」などとしなくても、DNA鑑定さえすれば誰の子かはわかるのでは? という素朴な疑問もあるかと思います。

 

しかしながら、科学技術の進んだ今でも、戸籍制度のもとでは、あくまで、夫婦から届出られた子を二人の子と推定し、DNA鑑定による生物学的な関係の立証を必要としていません。これは、一回一回誰の子かを鑑定しなければ親子かがわからないとなると身分関係の安定に資さないからとされています。

 

これによって、戸籍上の親子と生物学上の親子とが乖離する複雑な問題が生じる可能性もあるのですが、このお話はまた別の機会に譲ります。

 

 

水谷江利

世田谷用賀法律事務所弁護士

 

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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