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遺言書は自分の意思を家族に伝える大切な書面で、誰にどの財産を相続させるかを書いておくことで、遺産相続をスムーズにする効力があります。一方、遺言書に書いても法的な効力がない事項があり、場合によっては遺言書そのものが無効になることもあります。みていきましょう。

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遺言書で効力が生じる事項

遺言書に記載して効力が生じる事項には、大きく分けて「財産に関する事項」、「身分に関する事項」、「遺言執行者の指定」があります。

 

財産に関する事項

遺言書で効力が生じる財産に関する事項は、次のようなものが代表的です。

 

  • 相続分・遺産分割方法の指定
  • 遺贈(相続人以外に遺産を継がせる)
  • 生命保険金受取人の変更
  • 特別受益の持ち戻しの免除 など

 

◆相続分・遺産分割方法の指定

遺言書では、誰に何を相続させるか、相続分や遺産分割方法を指定することが大半です。相続分や遺産分割方法は自由に指定できますが、兄弟姉妹を除く相続人には遺留分(最低限受け取れる遺産の割合)があります。遺言書で相続分を指定するときは、遺留分を守るように注意しましょう。

 

◆遺贈

民法では法定相続人(遺産を相続できる人)の範囲が定められています。法定相続人以外の人に遺産を継がせたい場合は、遺言書で定めることができます。

 

◆生命保険金受取人の変更

遺言書では生命保険金の受取人を変更することもできます。ただし、相続人が遺言書を見るまでは誰にも伝わらないため、保険会社や契約上の受取人を巻き込んだトラブルになる可能性があります。

 

◆特別受益の持ち戻しの免除

特別受益の持ち戻しをしないことを遺言書で定めることもできます。特別受益とは、ある相続人が生前に贈与された財産をさします。

 

通常、特別受益された財産は遺産に持ち戻したうえで遺産分割を行います。特別受益があった人は相続分から特別受益された財産を差し引きますが、このように計算すると遺産を受け取れない場合もあります。そのような不利益を避けるため、特別受益の持ち戻しを免除することができます。

 

◆財産に関する事項は具体的に記載する

遺言書に財産に関する事項を記載するときは、誰がいくら遺産を相続するかを具体的に明示する必要があります。

 

たとえば、遺言書に「相続人Aに総遺産に対する遺留分相当額を相続させ、相続人Bにその残金を相続させる」と記載したとします。一見すると、具体的に記載しているようにも思えますが、遺留分の計算では特別受益を考慮する必要があるほか、総遺産の範囲が明らかでなければ相続人が相続できる金額が確定しません。

 

このように、誰がいくら遺産を相続するかが明確でない遺言内容は、結局相続人間の協議が必要となり、相続人どうしの争いを招くことにもなりかねません。遺産の取得内容がはっきりしない文言は記載しないように注意しましょう。

 

身分に関する事項

遺言書で効力が生じる身分に関する事項は次のとおりです。

 

  • 子の認知
  • 未成年後見人・未成年後見監督人の指定
  • 推定相続人の廃除・廃除の取り消し

 

◆子の認知

遺言書では、婚外子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)を認知することができます。婚外子と母の法的関係は出産した事実から明らかですが、婚外子と父の法的関係は認知によって成立します。子を認知することによって、婚外子も相続人になることができます。

 

◆未成年後見人・未成年後見監督人の指定

未成年の相続人に親がいない場合、または親が同じ相続の当事者である場合は、代理人として未成年後見人を立てなければなりません。未成年後見人は遺言書で指定することができます。また、後見人を監督する監督人を指定することもできます。実際に未成年後見人を立てるときは、遺言執行者が市区町村役場に届け出る必要があります。

 

◆推定相続人の廃除・廃除の取り消し

推定相続人の廃除とは、相続人になる予定の人のうち素行不良の人を除外することをいい、遺言書で指定することができます。また、遺言書で廃除を取り消すこともできます。ただし、推定相続人の廃除も取り消しも遺言書に書くだけでは不十分で、実際には遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる必要があります。

 

遺言執行者の指定

遺言書に書いたことは本人が実行することはできず、相続人が実行します。しかし、遺言書の内容が相続人にとって不利なものであれば、相続人が実行しない可能性もあります。

 

遺言書の内容を確実に実行するために、遺言書では遺言執行者を指定することができます。トラブルが予想される場合は、利害関係のない第三者を指定するとよいでしょう。自分の死後に誰かに遺言執行者を選んでもらうよう、遺言書で指示することもできます。

 

なお、遺言内容に子の認知、相続人の廃除が含まれている場合は、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、相続人が家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を選任してもらう必要があります。

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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