パーソナルデータ利用には、高度な保護の仕組みが必要
しかし、情報漏えいのリスクを伴うからといってデジタルデータの利用を躊躇することはできません。ネットワークを通して膨大に集積されるデータの利用を抜きにビジネスや社会生活は成り立たないのです。
特にパーソナルデータは個人の嗜好やニーズを具体的にとらえ訴求したい対象を絞り込んでアプローチすることを可能にするものとして、広告・宣伝活動の重要なファクターとなっています。
わが国はすでに2008年をピークに総人口の減少に入りました。右肩上がりに増える「人口ボーナス」に支えられてサービスや商品が売れた時代は過去のものです。
最新のテクノロジーを最大限に活用しながら誰が何に関心をもち、どこで何をしているか、いつ何を買ったかといったことを示すパーソナルデータから顧客のプロフィールをつかみ、一人ひとりに狙いを定めて効率良くアプローチをすることが、売上を確保する重要な要素になっています。いわゆる「データマーケティング」や「ターゲティング広告」などと呼ばれているもので、すでに多くの企業で取り組みが進んでいます。
しかし、このパーソナルデータは、万一漏えい事故などを起こせば損害賠償の請求を受ける可能性があるだけでなく、社会的な信用を失い顧客も喪失するなど、経営の屋台骨を揺るがす事態に発展しかねないものです。
個人情報の管理については、年を追って厳しくなっています。今何が要求されているのか、それに応える体制は確保できているのかといった現状を知り、自社の仕組みづくりをしっかりと行っていく必要があります。例えるなら高出力のエンジンを搭載した車には、高性能のブレーキが必要です。高度なデータ利用を進めるなら、同時に個人情報を保護し、情報セキュリティを確保する厳格な仕組みが求められます。
社会の要請に応え、それを上回る堅固なセキュリティ体制を確立しなければ、サイバーリスクが高まるなかでの情報活用を自信をもって進めることはできません。
仲手川 啓
株式会社ユーピーエフ 代表取締役