公的機関が、業務発注先の条件にすることも増えてきた
プライバシーマーク取得の最も大きな、そして目に見えるメリットは、ビジネスチャンスの拡大にあるといっても過言ではありません。というのもその企業の個人情報保護体制がどうなっているかということが、業務委託の際の大きなポイントになっているからです。
特に最近では公的機関が民間企業に仕事を発注する際の入札に当たって、「プライバシーマークを取得していること」あるいは「プライバシーマークを取得していることが望ましい」という条件を付けるケースが増えています。
よくみられるのが、地方自治体が運営するホームページの制作・管理・更新や書類の発送代行業務、労働者派遣業務、水道メーターの検針などの業務委託における入札です。これらに共通しているのは、業務遂行の過程で個人情報やそのほかの重要な情報の処理や取り扱いが求められることです。そのため必然的にプライバシーマークなど、情報の取り扱いにおいて信頼できる会社であることの証明が必要になっているのです。
発注する行政側にとっては、業務が安心して任せられるということ以外にもメリットがあります。万が一委託先で個人情報漏えい事故が起こった場合にプライバシーマーク未取得の業者に委託していたとすれば、「なぜそのような業者に委託したのか」という発注者としての責任が厳しく問われかねないからです。
逆に、プライバシーマーク取得業者に発注していれば、発注者としては十分な配慮をしていたということであり、問題はむしろプライバシーマーク取得企業自身の運営や、管理団体の監督にあったということになります。その意味でも、プライバシーマーク取得事業者への発注が優先される仕組みになっているのです。
行政がいかにプライバシーマークを重視しているかは、補助金の支給という形で取得支援に積極的に乗り出す自治体が増えていることからも明らかです。
例えば東京都港区では、区内に本社を有する法人や住所を有する個人事業主がプライバシーマークやISMS認証の取得をしようとするとき、取得に掛かる申請料・審査料・登録料・コンサルタント委託料について、対象経費の2分の1程度(上限50万円)を補助するという制度を運用しています。
ほかにも現時点で東京都の江東区、台東区、江戸川区、足立区、北区、荒川区、大田区、品川区、練馬区、世田谷区、埼玉県戸田市、群馬県高崎市、茨城県水戸市と日立市、千葉県千葉市、神奈川県横須賀市、愛知県春日井市、岩手県奥州市、島根県などでも取得補助制度を運用しています。
公的機関だけでなく民間企業からの業務委託についても、プライバシーマーク取得企業は有利です。委託先の選定に当たってはプライバシーマーク取得事業者を選ぶべきだという声は年々大きくなっており、業務委託先選定の際に必須条件とする企業も増えているからです。
特に上場企業においては、個人情報漏えい対策について株主から厳しい指摘や要求を受けることが多くなっています。いったん個人情報漏えい事故が起これば、経営の屋台骨を揺るがすような事態につながることも十分に予測され、それだけ株主も敏感になっているのです。
プライバシーマーク取得企業が優先されるようになると、取得していないというだけでせっかく高い技術やノウハウをもっていても、そもそも受注競争に加われないだけでなく、長年業務を受注してきた得意先から「来年度から、委託先はプライバシーマークをもっているところに限ることになりました。申し訳ございません……」と、突然失注してしまう可能性もあるのです。
年々、委託元に対する委託先、再委託先の管理の厳格化という要請は強まっています。委託先へのアンケート配布、その回収と検討、是正の要望、といったことが行われているのですが、委託先がプライバシーマーク取得事業者であれば、これらの調査は必要ありません。委託元の管理の手間は大幅に軽減されることになります。
その意味では、仮に長年安定して事業委託を受けており、プライバシーマークを取得してほしいという話は出ていない、という場合でも、今後とも安定して事業の受託を得るために、先行してプライバシーマークを取得すれば、委託元からの信頼度が高まります。
プライバシーマークの取得は受注機会を増やし、突然の失注を防ぐだけでなく、委託元の業務負担を減らすことを通して信頼関係を強化することにもつながり、ビジネスを安定・拡大することにつながります。
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