ロシア問題と航空産業…航空機の「燃油価格」、機体製造の「OEMサプライチェーン」が受ける影響 (※写真はイメージです/PIXTA)

2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻と激化は、航空産業にとっても壊滅的な重要性を持つ。これらの制裁の多くは今後数週間ないしはそれ以上、航空業界に大きな影響を与え続けると想定される。燃油ならびに機体製造への影響の深刻度はどの程度か。Ishkaは商用航空産業の最も直接的な帰結を4回に分けてリポートする。※英文のオリジナルリポートは3月1日に掲載。

 

ロシアによるウクライナ侵攻と激化による航空業界への影響がどのくらい続くのか、現時点で推定することは困難だ。世界の航空産業への影響は明らかにウクライナで起こっている人道悲劇の二次的なものであるが、情報に基づいた意思決定に利用いただくため、Ishkaは商用航空産業の最も直接的な帰結を以下9項目リポートする。第3回となる本記事では『6.燃油価格について』『7.OEM サプライチェーンについて』について解説する。

 

1.ロシア企業にリースされている航空機

2.ロシアにある西側OEMによる製造機体

3.SWIFTおよび 支払いの制約

4.ロシア通貨ルーブル急落とロシア経済への影響

5.空域閉鎖について

6.燃油価格について

7.OEM サプライチェーンについて

8.制裁によりロシアの銀行、リース会社、OEM停止 

9.ベラルーシとウクライナ

 

第1回目記事:『ロシアのウクライナ侵攻が航空産業に及ぼす「新たな影響」』

第2回目記事:『ロシア、EUにリンクする「すべての航空機リース活動」が制裁により完全制限へ』

6.燃油価格について

ウクライナ紛争により、この数日間で石油価格が1バレル100ドルをはるかに上回り、ゴールドマンサックスのアナリストによれば、欧米政府がロシアのエネルギー輸出に制裁を課す場合、価格は1バレル120ドルまで上がる可能性があると述べている。国際エネルギー機関(IAE)は3月1日、加盟国がこの不足を防ぐため緊急備蓄から6000万バレルの石油を放出することに合意したと述べた。

 

石油価格の上昇はジェット燃料に転嫁され価格の上昇が起こりえる。IATAジェット燃料価格モニターによると、過去1年間で約59%の価格上昇が観察されている。

 

◆Ishkaの見解

燃油価格の上昇は、現在の状況からもっとも直接影響を受けている1つであるが、他の産油国が生産量を増やせば、いち早く逆転する可能性もある。その間、世界中の多くの航空会社が、パンデミック後の収益回復に取り組んでいるが、より高い運用コストを経験することになるであろう。

7.OEM サプライチェーンについて

欧米各国のOEMは、チタン供給に関して紛争の影響を受ける可能性があり、サプライチェーンコンサルティング会社AeroDynamicアドバイザリーは、商用航空の生産が停止する可能性さえあるとLeeham News誌に語っている。ロシアのVSMPOは、世界最大のチタン 海綿生産者である。VSMPOに精通しているトレーダーがArgusメディアに個別に語ったところによれば、制裁はまだ金属輸出に影響を与えていないが、「(危機が)悪化した場合、ロシアが金属に課された制裁の対抗措置が、個人に向けられ、それが問題となる可能性があると思う」とコメント。

 

「興味深い問題は、エアバスとボーイングがVSMPOに依存していることだ。現在の情勢を理由に、すでに競合他社に接近していると我々は認識している」と市場関係者はArgusに語っている。エアバスは、また、地政学的リスクがチタン調達政策ポリシーにまで及んでいるとも語った。「したがって、私たちは短期・中期的な問題として保護しなければならない。このエクスポージャーは、ロシアのチタンサプライヤーVSMPOに対してエアバスの直接調達と(Tier1サプライヤーを通じた)関節調達の混合です」とエアバスはコメントしている。

 

これとは別に、サフランはロイター通信に対し、年初から金属の在庫を増やし、数カ月間は十分なチタンの在庫量があると語っている。

 

◆Ishkaの見解

現段階では、チタンの輸出はすぐには影響しないが、ロシアが金属の輸出制裁で対抗措置をとれば、その影響を受ける可能性はある。

 

エアバスやボーイングを含むすべての欧米OEMのチタンのサプライチェーンは多様化している。これは、2014年のクリミアの併合時によって推進されたことである。

 

ただし、OEMが他のサプライヤーを通じてチタンにアクセスできる場合でも、不足による価格の押上げが起こる可能性がある。チタンに加えて、OEMの生産に影響を与える可能性のある他のコンポーネントやアビオニクスの供給についてもロシアに依存している。生産率への影響は引き続き留まっており、名目上サービスが開始できる駐機中の何千もの航空機が、サービスへの復帰を加速してくれる可能性がある。

 

 

Ishka シニアアナリスト
エドゥアルド・マリス

 

※ この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものであるため、英語版が(正)となります旨、ご了承ください。

 

Ishka シニアアナリスト

航空機リース市場の最新動向から世界各国の規制環境など、インサイトレポートの調査・執筆を担当。

コロナ流行開始以来、航空会社に対する政府支援データベースを構築し、ESGや持続可能性に関するIshkaの報道をリード。

京都大学大学院で経済学の修士号、ニューサウスウェールズ大学でコミュニケーションとジャーナリズムのメディア学士号を取得。

英語とスペイン語に堪能で、またインドネシア語も操る。


※ Ishkaは、グローバルな航空ファイナンスコミュニティに向けて、エアライン与信分析データ、機材鑑定評価、航空機材取引価格データ、オーダーメイドのアドバイザリーサービス、航空機投資イベントを提供しています。

ishka問い合わせ先
ウェブサイト:www.ishkaglobal.com
メール:team@Ishkaglobal.com

著者紹介

連載【Ishka緊急レポート】ロシアのウクライナ侵攻と航空機業界

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
TOPへ