ロシアによるウクライナ侵攻と激化による航空業界への影響がどのくらい続くのか、現時点で推定することは困難だ。世界の航空産業への影響は明らかにウクライナで起こっている人道悲劇の二次的なものであるが、情報に基づいた意思決定に利用いただくため、Ishkaは商用航空産業の最も直接的な帰結を以下9項目リポートする。第2回となる本記事では『3.SWIFTおよび 支払いの制約』『4.ロシア通貨ルーブル急落とロシア経済への影響』『5.空域閉鎖について』について解説する。
1.ロシア企業にリースされている航空機
2.ロシアにある西側OEMによる製造機体
3.SWIFTおよび 支払いの制約
4.ロシア通貨ルーブル急落とロシア経済への影響
5.空域閉鎖について
6.燃油価格について
7.OEM サプライチェーンについて
8.制裁によりロシアの銀行、リース会社、OEM停止
9.ベラルーシとウクライナ
第1回目記事:『ロシアのウクライナ侵攻が航空産業に及ぼす「新たな影響」』
3.SWIFTおよび 支払いの制約
世界有数の銀行間決済システムであるSWIFTからロシアの特定の銀行を除外することは、 ロシアから他の国への決済システムを切り離す。リース会社はこうなることを予想し準備をしていた。つまり、EUにリンクされたすべての航空機リース活動が制裁によって完全に制限される。
早くも2月中旬、Avolonは、“20機未満”のロシアにある航空機に関連する支払いについてSWITの代替案を検討していると報告している。CEOのDomhnal Slattery氏はロイターに「リース料支払いの観点から、どうやってそれらを回避できるかに焦点を合わせている」と語った。
◆Ishkaの見解
Avolon以外の貸し手も同様の準備をしている可能性があり、SWIFTの制約は、航空機を引き上げるという圧倒的な作業の次に、2番目の優先事項となる可能性が高いが、延滞したリース料の支払いを妨げられる可能性もある。この段階では、EUにリンクしない他のリース会社がロシアの航空会社にリースを継続する(あるいは継続できる)かどうかは不明である。もしあれば、SWIFTの支払い封鎖は解決しなければならない障害の1つとなるであろう。
4.ロシア通貨ルーブル急落とロシア経済への影響
欧米の制裁とウクライナ侵攻による深刻な影響で、ロシアルーブルは押し下げられ、月曜日だけでその価値は4分の1となった。EUはまた、ロシア中央銀行もしくはその代理として行動する法人もしくは団体との取引を禁止しており、銀行の外貨準備へのアクセスを事実上阻止し、通貨を下支えする能力を制限している。
ロシアの航空会社にとって、ルーブル安の影響は深刻である。ロシア最大の航空会社である国営アエロフロートは、通貨安などの制裁措置に備えてストレステストを受けたと報じられているが、Bell誌が引用した政府関係者の報告によると、これらのテスト結果と現実は異なる可能性がある。「公には誰もがポジティブな報告をするが、個人的な会話では悲劇的だ」と関係者の1人は伝えている。
◆Ishkaの見解
ロシアの美辞麗句にも関わらず、通貨下落と経済への深刻な影響は、ロシアの航空会社と一般のロシア人の財政状態にも悪影響を及ぼす。ロシアの人々が海外への空の旅に再びアクセスできるようになったとしても、ルーブルの価値が回復しない限り、より高いドルの固定費を反映するためにチケット価格を上げる必要がある。これは多くのロシアの人々にとって空の旅は手の届かないものになる可能性がある。
5.空域閉鎖について
EU,英国、カナダ、および特定のスカンジナビア諸国は、3月1日の時点で、ロシア機材に対し空域を閉ざしている。このリポートを発行する間にも、EUはロシアの空域禁止を拡大することについて米国と議論している。一方、米国の共和党議員であるカルロス・ギメネス下院議員は、禁止する法律を提出予定である。ロシアが運航する航空会社と米国の空域を飛行するプライベートジェットが対象となる予定。
これまでで最も広範囲にわたる今回のEU制裁措置は、緊急着率を除いて、ロシアの航空会社またはロシア事業体によって管理されている航空会社による離発着、もしくは上空飛行を禁止。これらの国々を発着する航空会社だけでなく、それら以外の多くの航空会社までもが、ロシアへのフライトをキャンセルしている。
対抗措置で、制裁国に拠点を置く航空会社に対しロシア空域を封鎖したことにより、ヨーロッパとカナダから北東アジアへのフライトが相互にブロックされ、より長い北または南周りのルート使用に制限されている。北東アジアに対し大規模な路線ネットワークを持つ2社の欧州航空会社、KLMとフィンエアーは、代替え案を検討しており、その間、日本、韓国、中国へのフライトを3月6日までキャンセルしたと述べた。航空会社はまた、2022年第一四半期および2022年下半期の運航環境に関連するガイダンスを撤回している。
◆Ishkaの見解
シリア、リビア、ウクライナ東部、イエメンなど、戦争や紛争に関連して、近年、世界の空域の一部が封鎖されている。しかし、冷戦以来、この規模の空域封鎖は、世界でも見ることはなかった。ロシアは航空会社から数億ドルの飛行権を得ており、航空会社はこられの費用負担がなくなるが、ロシアを一周したり、中東などの中間ハブを経由して輸送経路を再構築する必要がある。またそれにはコストがかかり、燃料も多く消費される。
ロシア以外の航空会社で影響を大きく受けるのは、間違いなく欧州の航空会社であるが、中東のハブアンドスポーク航空会社は、コネクティング輸送からの増加を得られる可能性もある。しかし、ロシアの上空飛行が制限されれば、ME3航空会社も米国のフライトへの混乱がもたらされる可能性がある。
Ishka シニアアナリスト
エドゥアルド・マリス
※ この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものであるため、英語版が(正)となります旨、ご了承ください。