将棋の対局はインターネット中継により、ファンたちが手軽にみられる時代になった。しかしその一方、中継だけでは伝わらないこともある。カメラに映らない光景、対局室のマイクが拾わない言葉…。彼らが胸に秘める闘志や信念は「文章にしないと、後に残らない」。将棋界を10年以上取材してきた朝日新聞の村瀬信也記者が、勝負師たちの姿を追う。今回は、「豊島将之」。

 

「実力不足を痛感したので、実力をつけていかないといけない」

 

敗れた第4局の対局後、豊島はそう語った。2年前に語った危機感が早くも顕在化した形だが、ここまで厳しい現実が待ち受けていることは豊島自身もイメージしていなかっただろう。この先、藤井と互角に戦っていけるのか――。豊島が直面している試練は、これまでより一層厳しいものと言えるのかもしれない。

「またタイトル戦で活躍できるように頑張りたい」

竜王戦の敗戦から8日後の11月21日。豊島は将棋日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)の決勝という舞台で再び藤井と対戦した。豊島には2年連続3回目、藤井には初めての優勝が懸かっていた。

 

JT杯は多くのファンが観戦する公開対局として行われる。この日、会場の千葉・幕張メッセでは1千人を超す人たちが戦いを見守った。和服に身を包んだ両者の戦いは激しい攻め合いとなったが、豊島が95手で勝利し、藤井に一矢報いた格好となった。

 

感想戦とセレモニーを終えた豊島は、最後に優勝の感想を述べた。

 

「JT杯は初めて優勝できた棋戦。無冠で苦しんでいた時期に励みになり、それから結果を出すことができました。これからまたタイトル戦で活躍できるように頑張りたい」

 

捲土重来(けんどちょうらい)を期す豊島と、四冠となった藤井。2人の戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

村瀬 信也

朝日新聞 記者

 

 

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本記事は『将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学』(幻冬舎)を抜粋・再編集したものです。

将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学

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村瀬 信也

幻冬舎

藤井聡太、渡辺明、豊島将之、羽生善治…… トップ棋士21名の知られざる真の姿を徹底取材!! 史上最年少で四冠となった藤井聡太をはじめとする棋士たちは、なぜ命を削りながらもなお戦い続けるのか――。 「幻冬舎plus」…

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