月額13万円…将来「年金だけ」で暮らすことは可能か?
金融庁の報告書では、年金だけで生活している高齢夫婦世帯の月額支出は26万円だった。年金月額が13万円になるということは、年金だけで暮らそうと思うと、支出を半減させることが必要になる。そんなことが現実問題として可能なのか。
2019年「全国家計構造調査」によると、2人以上世帯のなかで月額消費が10万円未満の世帯が4.1%、10万円以上15万円未満の世帯が13.1%存在している。大雑把に言うと6世帯に1世帯が13万円以下に消費を抑えているのだから、年金だけで暮らすことは不可能とは言えない。しかし、平均の消費額は27万9066円となっているから、月額13万円だと、人並みの暮らしができないどころか、相対的貧困に陥ることは明らかだ。
また13万円というのは、あくまでも夫婦の年金だ。例えば、サラリーマンの夫が妻に先立たれた場合の年金月額は9万3000円になる。この収入だと所得税や住民税はかからないが、健康保険料と介護保険料はかかってくる。これが月額7417円かかるから、手取りは8万5583円となる。これで生活が成り立つのかを考えてみてほしい。
ちなみに、2021年11月10日付の朝日新聞によると、介護保険料を滞納して預貯金や不動産などを差し押さえられた65歳以上の高齢者が、2019年度に過去最高の2万1578人だったことが分かったという。いまの年金水準でも、これだけの人が介護保険料を支払えないのだから、年金給付が4割下がったら、保険料を支払えない高齢者が激増することは、明らかだろう。
つまり、このまま行くと、平均的な日本人が高齢期を迎えると、「長生き地獄」にまっしぐらとなってしまうのだ。
森永 卓郎
獨協大学経済学部 教授
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