2022年2月、世界が注視するなかロシアはウクライナへ軍事侵攻した。各国が語気を強めてロシアへの非難を表明する一方、中国は「侵攻」「侵略」といった表現を使わず、欧米による対ロシア制裁には同調していない。そこには中国の「微妙な立場」が見え隠れしており、情勢の展開如何で、中国外交がどのような対応となるか予断を許さない。元財務省官僚で中国の政治経済に精通した著者が分析し、同氏が2014年ロシアによるクリミア併合の際に、中国とロシア、ウクライナの政治経済関係についてまとめたレポートを紹介・再掲する。

政治的には微妙な中国の立場

中国外交部は、2014年3月中旬の記者会見で「中国は、歴史的に一貫して、各国の主権、独立、領土保全を尊重している。クリミア問題は、法と秩序に基づいて政治的解決が図られるべきである。国際社会は、緊張緩和のため、建設的な役割を果たすべきだ」とだけ述べている。

 

2014年3月、クリミアの住民投票を無効とする国連安保理決議案にロシアが拒否権を発動、その他の13ヶ国がすべて賛成する中で中国は棄権し、投票後、中国政府関係者は「決議案は各国間の対立をあおり、事態を複雑にするだけ」「関係国は矛盾を激化させるような行動は慎むべき」と述べたと伝えられる(2014年3月19日付新華国際)。安保理で、中国はロシアと一緒になって拒否権を発動することが多く、棄権という対応はやや異例というべきだ。

 

2014年4月に開催されたG20では、各国が一致してウクライナへの経済支援を強化することで合意、中国もこれに賛同したようだが、G20の場で、中国が本問題について、特に何か強く主張したというようなことは伝わってこなかった。

 

近年、中国の外交政策は、鄧小平以来の”韬光养晦”方針(内政に注力し、外交については目立たない)を見直し、より積極的なものに変わってきていると見られているが、本件に関する限りは、“韬光养晦”方針に戻った感がある。

 

中国内でも、上記新華国際報道が「中国がウクライナ危機に対応する態度は微妙」と題する記事を掲載し、中国政府の態度は“相当模糊”(かなりの程度あいまい)と指摘、その背景として、中国が国内に分離独立運動を抱え、いかなる分離主義にも反対する一方、ロシアを外交上の”盟友”と位置付けていることを挙げている。

 

香港のメディアはやや皮肉な見方を展開している。例えば2014年3月18日付香港英字紙(South China Morning Post)は、中国政府は一貫して内政不干渉の外交原則を掲げている関係で、外交上の論理パラドクスに陥っているとしている。すなわち、ロシアを批判するとロシアに対する干渉になるが、ロシアが他の主権国家に干渉することを批判せず放置しても、やはり内政不干渉の外交原則に背くことになる。

 

結局、現状中国にとってはウクライナよりロシアがはるかに重要なため、自らの利益に照らして、欧米と一緒になってロシアを非難することには組みしない選択肢をとっているというわけだ。

 

搜狐評論の名家専欄(専門家論壇)2014年4月も、中国は“没有選択的選択”、選択肢がないという選択に直面しているとしている。すなわち、基本的にはウクライナとの貿易関係(後述)や同国の地政学的戦略性、ウクライナ問題で展開する西側の価値観外交等の要因が中国の内政に及ぼす潜在的影響を考慮することになるが、中国がロシアの対応に一定の理解を示しているのは、本件には“事出有因”“偶然中有必然”、事が生じた背景には原因があり、偶然の中に必然があると見ているためであるとし、中国が内心最も望んでいることは、関係国が政治的解決を図り、(いかなる形であれ)事態が安定化することであるとしている。

 

他方、同じく香港のメディアである大公報は、中国が立場を明確にしないため、欧米、ロシア双方が中国を”拉拢”、取り込もうと接近しており(2014年4月のドイツ・ロシア外相の相次ぐ訪中に端的に表れている)、欧米とロシアの対立が長引くと、むしろ中国が相対的に有利になるとの見方を示している。

 

いずれにしても、中国も、ロシアの行動は一時的・突発的なものではなく、旧ソ連解体後、冷戦下で拠りどころとされてきたヘルシンキ宣言がEUやNATOの東方拡大に伴い形骸化し、相対的に影響力が低下し不満を蓄積させてきたロシアが、単なる「亜州帝国」ではなく、再び「欧亜帝国」を目指すという長期的戦略に基づいて、周到に計算してきた結果という見方をとっているようだ(社会科学院亜太全球戦略研究院、2014年4月2日中国社会科学在銭他)。

 

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