2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、各国が非難の声を上げている。一方中国は、他国とさりげなく足並みをずらしており、その立ち位置はなんとも微妙だ。実は中国の立ち居振る舞いの理由は、2014年のロシアによるクリミア併合から探ることができる。このため、以下、当時の筆者の分析を改めて紹介する。

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対ウクライナ経済関係への影響は?

中国とウクライナの2国間貿易は、2013年、中国の対ウ輸出79.0億ドル(前年、201m年並み水準)、輸入27.3億ドル(対前年比53.4%増)、総額106.3億ドル(同9.8%増)で、中国の総貿易に占めるシェアは0.2%程度にすぎないことから(ウクライナにとって中国は、第3の輸出市場であるとともに、第2の輸入先)、中国内で対ウ貿易への影響についての議論はあまり見られない。

 

また、ウクライナが欧米とロシアのいずれを選択しても、その経済を立て直すため、中国からの投資を歓迎することには変わりないと見ているようだ(上海華東師範大学ロシア研究センター副主任、2014年2月26日付環球網)。

 

ただし、ロシアや香港での報道・専門家の見方を紹介する形で、①中国はウクライナの港湾プロジェクトに関与し、これを欧州市場進出への足掛かりにしようとしているが、こうしたプロジェクトが中断してしまっていること、②ウクライナは中国にとって主要な武器供給源になっているが(ストックホルム国際平和研究所によれば、2012年、ウクライナは米国、ロシア、中国に次ぐ世界で4番目の武器輸出国)、ウクライナが欧米側に就くとなると、対中武器供給に禁輸制限がかかるおそれがある点がやや懸念されている(2014年4月15日付環球軍事報道)。

 

ウクライナから中国への武器輸出について、統計上は明確には確認できないが、現状、ウクライナは、中国におけるジェット戦闘機・その他戦闘機の維持補修、エンジンの製造等の面で、重要な役割を果たしているとされる(2014年2月26日付参考消息)。

 

(注)ウクライナ税関統計を基に、中国商務部が発表している数値 (資料)中国商務部国別貿易報告より筆者作成
[図表1]ウクライナの対中貿易(2013年) (注)ウクライナ税関統計を基に、中国商務部が発表している数値
(資料)中国商務部国別貿易報告より筆者作成

 

さらに、中国は穀物自給の原則は変えていないものの(なお自給率95%)、増大する穀物需要、特に豚等飼料用穀物を一部輸入に切り替え始めており、ウクライナとも2012年、中国輸出入銀行がウクライナに30億ドルの融資を行う見返りに、ウクライナから安定的な穀物供給を受けることで合意し、昨年末に穀物の積み出しが始まったばかりだ。現在、ウクライナからの穀物輸入は、穀物総輸入の約3.3%を占めている。

 

しかし、ロシアに併合されたクリミア半島がウクライナの穀物輸出の10%を扱っていることに加え、中国がパートナーにしているウクライナの関連企業はみな、前政権に近かった国有企業であることから、穀物供給の見通しが不透明になりつつある(参考文献2)。

 

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