2022年2月、世界が注視するなかロシアはウクライナへ軍事侵攻した。各国が語気を強めてロシアへの非難を表明する一方、中国は「侵攻」「侵略」といった表現を使わず、欧米による対ロシア制裁には同調していない。そこには中国の「微妙な立場」が見え隠れしており、情勢の展開如何で、中国外交がどのような対応となるか予断を許さない。元財務省官僚で中国の政治経済に精通した著者が分析し、同氏が2014年ロシアによるクリミア併合の際に、中国とロシア、ウクライナの政治経済関係についてまとめたレポートを紹介・再掲する。

プラグマティックな中露関係

ウクライナ問題と中国について考える場合の大きな鍵は、言うまでもなく、中国とロシアの関係をどう見るかだ。確かに両国は外交上の“盟友”と見られており、特に近年、例えば国連における対シリア制裁への対応で共同歩調をとっていることにも見られるように、新たな戦略的パートナーシップを築こうとしていることは明白だ。

 

しかし両国間には、周知の通り、旧ソ連解体から2005年に至るまでの約14年にわたる国境紛争の長い歴史があり、イデオロギー的にも完全に同じというわけではなく、地理的にも競合する関係にある。旧ソ連崩壊後、中国が上海協力機構(SCO)を立ち上げこれを主導してきたのも、エネルギー面でロシアへの過度の依存を避けるとともに、なおロシアの影響が強い中央アジア諸国との関係を強化し、ロシアと他の旧ソ連地域との間に楔を打ち込みたいという中国の強い思惑がある。

 

2013年以来、中国では”丝绸之路経済帯”(シルクロード経済ベルト)構想が、異例とも言える形で政治的にクローズアップされている(2013年9月、習近平主席が中央アジア歴訪の際に提唱、SCO、年末の経済工作会議でも言及、さらに14年4月には、もう一つの海上シルクロードベルト構想と合わせ、そのための専担部門を商務部内に設置)。これも、一義的には中央アジアからのエネルギー供給確保があるが、中央アジア諸国をロシアから遠ざけて中ロの間の緩衝地域にしたいという思惑がある(北京外語大学国際関係論系学者、参考文献1)。

 

他方、ロシア側にも中央アジアへの影響力を拡大させ、またSCOを主導する中国に対して強い警戒感があり、エネルギーを供給する一方、工業製品や消費財を輸入するという言わば先進国と途上国のような片務的な貿易構造に対し、「ロシアは中国の属国か」といった不満まである。

 

上記の北京外語大学者は、第一次プーチン政権下で対中武器輸出が抑えられたこと、中国に輸出する天然ガスの価格交渉が滞っていることも、ロシアの台頭する中国に対する大きな不安を表すものとの見方を示している。これらを踏まえると、両国が共通の理念をもって、長期的かつ安定的な信頼関係を築くとは考え難い。

 

ウクライナ問題で、欧米が対ロ制裁を強めれば、ロシアはエネルギー輸出先として中国を考え、中国もこれを歓迎するといった形で、とりあえずは中ロがより一層接近することにはなろうが、欧米、特に米国との関係で、その時々の情勢に応じて、中国はロシアを、ロシアは中国を、どう利用すれば自国の利益を最大化できるかを常に考えながら行動することになろう(参考文献4)。

「ダブルスタンダード」の議論

本件では、中国が欧米を批判する際に好んで使う“双重標準”(ダブルスタンダード)の議論が持ち出されやすいことに注意する必要がある。プーチン大統領も、クリミア併合にあたって、再三コソボの例を持ち出した。新彊ウイグル自治区等で同様の問題を抱え、分離主義に強く反対してきている中国としても、欧米のコソボへの対応とウクライナ問題への対応は矛盾しているではないかということになろう。

 

仮に新彊ウイグル自治区で独立運動が強まった場合、欧米は、今回と同じように、国際法や中国国内法から見て容認できないとして、中国政府の味方をしてくれるのかということになる。欧米からすれば、クリミアは特に弾圧や人権蹂躙を受けていたわけではない点が、コソボの場合と決定的に異なるということになる。そうすると問題は、中国の場合、新彊ウイグル自治区等で少数民族がそういった弾圧等を受けているのかということが問題になってくるが、中国政府はもちろん、そうしたことは全くないと主張することになり、欧米としてはそうではないとの明確な根拠を示す必要があることになる。

 

 

※ 記事内の参考文献については、次回記事の文末に掲載。

 

 

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