習近平国家主席は中国共産党創立100周年にあたる2021年7月1日の祝賀行事において、党規約にある「2つの100年奮闘目標」の1つ目「党創立100年までに小康社会全面建設完了」が達成されたと宣言した。そして今、2つ目の目標実現のための新たな政治スローガン「共同富裕」が注目を集める。果たして現下の中国政治経済にとって何を意味するのか。歴代の指導者が提唱したスローガンを振り返りながら検証する。

注目を集める新たな政治スローガン「共同富裕」

中国共産党創立100周年にあたる2021年7月1日、天安門広場での祝賀行事で、習近平国家主席は党規約に盛り込まれている「2つの100年奮闘目標」の1つ目の目標である「党創立100年までに小康(ややゆとりある)社会全面建設完了」が達成されたことを宣言した(『[連載]中国第20回党大会に向けての政治シナリオ』参照)。第2の目標「建国100年(2049年)までに社会主義現代化強国全面建設」の実現に向け、2021年以来、「共同富裕」が新たな政治スローガンとして注目されている。

 

習氏はすでに2020年、演説や講話で「共同富裕」に言及していたが、2021年はその頻度が増え、特に党中央委員会(党中央)直属の中央財経委員会で、鄧小平の一部の者を先に豊かにし、その後皆が裕福になるという「先富起来、先富後富」に言及したうえで、貧困解消と小康社会全面建設が完了し、今後は質の高い発展の中で「共同富裕」を推進することが新たな政策目標になると強調。

 

※ 党中央は2018年、「党と国家機構を深化させる改革方案」に基づき、既存の全面深化改革指導小チーム(領導小組)などいくつかの小組を、「党中央の党および国家事業に対する集中統一指導を強め、政策強化と職責全体の統一的配置(统筹(トンチョウ))・協調を図るため」、よりフォーマルな党直属委員会に改変。中央財経委員会はそのうちの1つで、現在、経済政策の企画・立案で中枢的役割を担っている。メンバーは主任が習氏、副主任が李克強首相、他は、王沪寧、韓正両常務委員。

 

これを受け、発展改革委員会(発改委)は9月、「共同富裕促進行動綱要」を制定する旨発表(2022年2月記者会見で、制定・発表する旨再度発言)。さらに、11月の第6回党中央委員会全体会議(6中全会)、12月の翌年の経済運営を議論する恒例の中央経済工作会議でも「共同富裕」が政策課題として明記された。

 

この間、人民日報など官製メディアがそろって、有名芸能人が巨額の脱税で摘発され大手企業が調査を受け罰金が科される動きを歓迎しつつ、「中国では現在、経済、金融、文化、政治の各分野で深い(深刻)変革が進行している。これは1つの革命と言えるもので、党の初心、人民中心、社会主義の本質への回帰」とした左派評論家とされる人物の論評を掲載。企業活動、文化、教育面での管理強化が見られる中、一部で「第2次文革」の到来と騒がれている。「共同富裕」は現下の中国政治経済にとって何を意味するのか。

「共同富裕」は古くて新しい政治フレーズ

習氏に限らず、中国の歴代指導者は一見もっともらしいが意味不明瞭なキャッチフレーズ(バズワード)を好む傾向がある。江沢民氏の「3つの代表」、胡錦濤氏の「科学発展観」、習氏の「新常態」や現行第14次5カ年計画のキーワードである国内と海外の「双循環」などだが、「共同富裕」もその1つと言える。

 

習氏は2021年1月、「我々は貧富の拡大を絶対許さない。共同富裕実現は経済問題であるだけでなく、党の執政基礎に関わる重大な政治問題でもある」と述べており、「共同富裕」は習政権の新たな政治スローガンという色彩が強い。

 

ただ実は、「共同富裕」は党歴史の中で古くから使用されてきた表現だ。中央財経委の議論に至るまでの「共同富裕」に関わる動きを整理すると次の通り。

 

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