今回は前回に引き続き、開業医の資産形成における7つの視点のうち、5つ目の「リスク許容度」について見ていきます。

投資可能額が分かればリスク許容度も把握可能

以下の図表は、資産形成を行ううえで投資可能額を算出する場合に使うものです。月額投資可能額によっても、リスク許容度はまた大きく異なってきますが、まずは簡単にポイントを説明しておきましょう。

 

【図表】投資可能額算出シート

 

●お金はいくらあるのか?

「純自己資金」とでも言いましょうか。現金としてどの程度保有しているのか。

 

●金融資産はいくらあるのか?

保険、証券など金融資産の総額を算出します。生命保険や株式、債券、自宅以外の不動産などで、現時点で換金可能な金額がどの程度あるのかをはっきりさせます。

 

●金融機関からの融資可能額はどれくらいか?

金融機関が開業医としての経営状況の安定や将来の見通しが良好であると判断すると、融資可能額は大幅に広がります。逆に悪いと判断された場合には、当然金額は少なくなってしまいます。

 

設備投資の予定がある場合、借入が可能であれば、その分の現金を投資に使えます。また不動産投資を検討する場合、自己資金以外の融資の枠がどれくらいあるかで、レバレッジ効果(少ない資金で大きなお金を動かすこと)が使える投資のボリュームが大きく変わります。

 

●親からの援助資金などはあるのか?

事業承継をした開業医の場合、親から贈与を受けるケースが多いものです。そうした援助がある場合には、その金額も把握しておきましょう。たとえば、祖父母から子や孫への教育資金の贈与額は、各1500万円までが非課税となります(2019年3月31日まで)。教育資金をこれによって賄うことができれば、投資額が1500万円増えたことになります。

 

こうして算出された初期及び月額投資可能額から見て、たとえば毎月20万円の黒字額があるとすれば、それがそのままその人の投資可能額になります。この投資可能額から判断して、おおよその「リスク許容度」が分かるというわけです。

リスクとリターンの関係は基本的に「正比例」

リスク許容度の設定にはもうひとつ大きな意味があります。それは、リターンとの関係です。金融商品というのは、大きなリターンをとろうと思えば、その分リスクが大きくなります。言い換えれば、リスク許容度はどの程度のリターンを望むのかによっても、決まってくるといえます。リスクとリターンの関係は基本的に正比例になります。

 

たとえば、元本に対して10%程度のリターンが欲しい。そんな希望がある場合は、逆に元本の10%が目減りするリスクもあるということになります。10%のリスク許容度の場合は、1か月50万円の投資をするとリスクの許容範囲はマイナス5万円となります。この場合のリターンは、最大でも5万円。

 

つまり、上下10%の変動があることを覚悟しなければいけないということです。初期投資金額が1000万円だった場合も同じです。リスク許容度を20%と仮定すると、リターンの可能性が最大で200万円程度ある一方で、200万円程度の損失をしてしまう可能性もあるということです。

 

つまり、リスク許容度とはリターンの裏返しです。「1000万円あるから1200万円に増やしたい」ということは、裏を返せば800万円になってしまうリスクを覚悟しなければいけないということです。こうしたリスク許容度をきちんと理解し、自分がどの程度のリスクを負えるのか、専門家の意見などを参考にしながら、自分自身で決めましょう。

本連載は、2015年8月4日刊行の書籍『開業医のための資産形成術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医のための資産形成術

開業医のための資産形成術

恒吉 雅顕

幻冬舎メディアコンサルティング

かつて開業医は、勤務医より圧倒的に収入が多く、リタイア後の悠々自適な生活を保障されていたことから、将来安泰な職業だと言われていました。しかし今、税制改革による富裕層への増税や、2025年問題へ向けた医療制度改正によ…

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