(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●市場の関心は利上げからバランスシート縮小へ、今回いくつかの想定のもと、シミュレーションを実施。

●縮小開始は6月を想定、縮小ペースはFOMC内での議論に基づき前回より速いペースを想定する。

●ただバランスシート縮小は、急ぐと前回のようにFF金利上昇の恐れがあり、時間をかけざるを得ない。

市場の関心は利上げからバランスシート縮小へ、今回いくつかの想定のもと、シミュレーションを実施

米金融政策の正常化に関する市場の関心は、利上げからバランスシート縮小に移行しつつあるように思われます。利上げについては、すでに複数の米連邦準備制度理事会(FRB)高官が開始時期やペースに言及していることから、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、3月に最初の利上げが実施された後、来年までに約8回の利上げ(利上げ幅は0.25%)が行われるとの見方が織り込み済みです。

 

一方、バランスシート縮小については、具体的な時期やペースに関する発言が、一部のFRB高官にはみられますが、まだ、FRBとしての明確なメッセージは発信されていない状況です。こうしたなか、市場では、バランスシート縮小は年央頃に開始されるとの予想が増えつつあります。そこで以下、バランスシート縮小について、いくつかの想定を行い、シミュレーションを実施します。

縮小開始は6月を想定、縮小ペースはFOMC内での議論に基づき前回より速いペースを想定する

前回のバランスシート縮小は、2017年10月から2019年10月まで実施されました。バランスシート縮小の基本方針は、2017年6月に公表されていたため、同年10月実施の際、市場に大きな混乱はみられませんでした。基本方針では、財務省証券と住宅ローン担保証券(MBS)について、再投資を行わない金額(バランスシート縮小額)の上限を設定し、3ヵ月ごとに引き上げる内容が示されました(図表1)。

 

 

なお、2022年1月に公表された、2021年12月分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、多くの参加者がバランスシート縮小の適切なペースは前回の正常化時より速くなるだろうと判断していたため、今回は、前回よりもバランスシート縮小の上限額を大きく設定します(図表1)。これに基づくと、2022年6月からバランスシート縮小が開始された場合、FRBのバランスシートは図表2のように推移することになります。

 

 

ただバランスシート縮小は、急ぐと前回のようにFF金利上昇の恐れがあり、時間をかけざるを得ない

FRBのバランスシート規模は、2020年3月に量的緩和政策を再開する前、約4.2兆ドルでしたが、シミュレーションによると、この水準に戻るのは4年2ヵ月後の2026年8月となります。この時期を短縮するには、バランスシート縮小の上限額引き上げや、FRBによる保有資産の売却という方法がありますが、実は、バランスシートの早急な縮小は、かなり難しいといえます。

 

1月31日付レポートで解説した通り、バランスシート縮小が進むと準備預金が減少します。前回の縮小局面では、準備預金が急減し、短期金融市場に資金を出し渋る金融機関が増え、FF金利が急騰する場面もみられました。その結果、FRBは2019年9月にバランスシート縮小を終了し、翌月から短期国債の購入を再開しました。そのため、少なくとも現時点では、急速なバランスシート縮小への警戒は不要と考えます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実は早急に進めることが難しいFRBのバランスシート縮小』を参照)。

 

(2022年2月21日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧