資産形成の方針は「7つ」の項目から考える
ここでは、資産形成に際して最優先すべきこととは何か、資産運用にあたって守らなければならない取り決めなどの確認を行います。ルールの設定では、大きく分けて以下の7つの項目を決めていきます。
①ファイナンシャルゴール(リタイア時期とやりたいこと)
②ボリューム(目標金額の設定)
③期間(ゴールまでの運用期間)
④投資スタイル(資産形成の方法と割合)
⑤リスク許容度(リターンとリスクの設定)
⑥関与(投資に費やす時間と労力)
⑦性格(投資商品との相性)
「①ファイナンシャルゴール」についてですが、これまで数多くの開業医にコンサルティングを行ってきた経験からすると、簡単にはリタイア時期を決められない方が多いようです。たとえば、都内で歯科医院を開業しているSさん(52歳)は、すでに息子さんが他の医院で勤務医として働いており、承継問題にも目処が立っている状態でした。にもかかわらず、リタイア時期についてはずいぶん悩まれていたのです。
Sさんは、いきなり完全リタイアをするのではなく、数年は息子さんの側でサポートしたいと考えており、これまでの馴染みの患者さんのケアもできるだけしていきたいとのことでした。
ファイナンシャルゴールは「経済的自由」の獲得
完全リタイアか、セミリタイアか――。確かに迷うところではありますが、実はファイナンシャルゴールの設定とはあまり関係ありません。というのも、ファイナンシャルゴールの目標とは「リタイアできる環境作り」を意味するものであり、言い方を換えれば、「経済的自由(ファイナンシャルフリー)」を手に入れることです。
単に生活費だけの問題ではなく、事業借入や住宅ローン、マイカーローンといった「借金」をすべて清算して、月々のランニングコストを最小限にしておくこともファイナンシャルゴールにとっては重要です。さらに、子供が成長して独立、もしくは事業承継してくれるのであれば、その準備も整えておきます。要するに、経済的に解き放たれて、悠々自適な暮らしをしていくのにもはや不安はない、という状態を意味します。
従って、リタイアの年齢や時期はあまり重要ではないということです。リタイアの時期は人によって大きく異なり、また様々な事情で変化を遂げていきます。資産形成をスタートさせる時点では、リタイア後にどんな生活をしたいのか、その具体的なイメージを決めるほうが重要なのです。
ちなみに、リタイア後の夢や理想について、開業医はどう考えているのでしょうか。弊社が実施した30〜40代の現役医師、歯科医師を対象にしたアンケート「リタイア後幸せに生きるために必要なもの、大切なものについての統計データ」を見ると、興味深い結果が出ています。「(リタイア後)一番大切なことは何ですか?」(複数回答可)という質問に対しての結果は次のようになります。
●1位・・・経済力(73.3%)
●2位・・・希望、夢、生き甲斐、目標、趣味(64.2%)
●3位・・・家族、友人、仲間、社会との繋がり(41.3%)
●4位・・・健康、体力、気力(36.2%)
●5位・・・感謝、思いやり(12.6%)
開業医らしい結果とも言えますが、少なくとも「経済的余裕」があれば、自分らしい理想的な生活が送れると考えているのかもしれません。マネーリッチがままならないと、マインドリッチも得られない。そんな結果が統計データに出ていると言っても過言ではないでしょう。また、タイムリッチに満たされていても、マネーリッチが得られなければマインドリッチを実践することはできません。