事実記載だけの報告書では不十分
デューディリジェンスの結果については、法務・労務について弁護士側が報告書を提出し、財務・税務について公認会計士や税理士が報告書を提出することになります。この他、不動産関係を専門業者が調べた場合には、当該業者からエンジニアリングレポートが提出されます。
こうした報告書は、デューディリジェンスによって明らかになった事実が漏れなく記載されたものであり、特にリスク要素は詳細な記載が必要とされる書類です。但し、より実践的な観点で考えますと、事実記載だけの報告書で留めるべきではないでしょう。
この報告書の提出を受けるのは買い手側であり、買い手側は報告書を基礎としてM&Aを進めるか否か、価格についてどの程度減額を求めるべきなのか、記載されたリスク要素にはどのように対応すべきかといった判断をする訳です。
報告書の内容を実際に「説明する」機会も必要
こうした報告書の機能に着目しますと、実践的な報告書としては、減額要因となる部分はどの程度の減額を求めるのが妥当か、将来発生するかもしれないリスク要素について売り手側に表明させ保証させるという表明保証条項で対応するとすればどのような条項が適切か、それとも発生確率に応じて現時点での減額を求めるべきなのかといった買い手側としての進め方の指針も記載すべきと考えます。かかる実践的な報告書であれば、その後に行われる価格交渉やM&Aに関する最終の契約書の作成に繋がるものとなるでしょう。
なお、報告書には、デューディリジェンスの結果の記載された本文だけではなく、本文を裏付ける証拠(主にデューディリジェンス段階で売り手側から入手した資料ですが、規制に関する法令や実務慣行等を調査した独自のものも含まれます。)を添付することになります。
報告書は、ある程度大部になり、内容も複雑なものとなる場合があります。そこで、報告書を受け取った買い手側が自社で検討することもありますが、できれば、デューディリジェンスを実施した専門家が買い手側に対して報告書に沿って説明する機会を設けて説明をするのが妥当でしょう。