今回は、M&Aのデューディリジェンスの範囲について見ていきます。※本連載は、弁護士法人飛翔法律事務所の編著書(執筆は五島洋弁護士、松村直哉弁護士、濱永健太弁護士、江崎辰典弁護士)、『事業承継にも使える!中堅・中小企業のためのM&Aコンパクトバイブル』(一般財団法人 経済産業調査会)の中から一部を抜粋し、M&Aにおいて重要性の高い手続「デューディリジェンス」の基本的な方法と実務ポイントを紹介していきます。
M&Aにより譲渡対象とされる事業を中心に調査する
今回は、デューディリジェンスの範囲について見ていきます。
デューディリジェンスは、必ずしもM&Aの対象会社全体を調査するものではありません。
例えば、事業譲渡の場合、M&Aにより譲渡対象とされる事業を中心に調査すれば良いでしょう。譲渡対象事業以外の部分は、周辺事情として把握すれば十分ですので、デューディリジェンスを徹底すべきは譲渡対象事業です。
逆に言えば、デューディリジェンスをしても資料不足で内容面が正確に分からない場合、或いは、簿外債務のリスクが残る場合などは、デューディリジェンスをしても明確にならないリスクを引き継がないように、譲渡対象を限定した事業譲渡を選択することが考えられるのです。このようにデューディリジェンスの範囲は、M&Aの対象範囲と有機的に繋がっているともいえるのです。
対象会社を超えて調査が必要な場合とは?
さて、逆に対象会社を超えてデューディリジェンスが必要な場合もあります。
例えば、事業内容が相互に関連する他の会社と密接に関係している場合には、関連する範囲で他社を調査する必要があります。
また、グループ会社の一社を譲受対象とする場合に、レピテーションリスクの有無という点で、他社を調査する場合もあります。譲り受けた後、社名変更等の対応をしたとしても、元々がどこの企業のグループ会社かは分かっていますので、グループ自体に大きなトラブルを抱えている場合にはレピテーションリスクをも引継いでしまう可能性があるからです。
結局、デューディリジェンスの範囲をどうするのかという問題は、対象会社を調査することを基本としつつ、リスクなく譲り受けるにはどこまで調査すれば良いのかという視点で、対象事業に絞り込んだり、対象会社以外のグループ企業に拡げたりすることになるのです。
【図表 デューディリジェンスは対象企業を中心に行う】
弁護士法人飛翔法律事務所
パートナー弁護士
大阪府出身、岡山大学法学部卒業、同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。1998年に弁護士登録。
M&A・事業承継・コンプライアンス・IPO支援・企業再生・人事労務等の企業法務の他、幅広く学校法務を手掛ける。
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連載M&A「デューディリジェンス」の基本的な方法と実務ポイント
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パートナー弁護士
大阪府出身、関西学院大学法学部卒業。2001年弁護士登録。
IT・知的財産権・情報関連分野等の企業法務を中心としているが、近時はM&A・事業承継・人事労務案件にも幅広く携わっている。
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パートナー弁護士
大分県出身、岡山大学法学部卒業、立命館大学大学院法務研究科法曹養成専攻修了。2009年弁護士登録。
M&A・不動産・広告(景表法及び薬事法等)・人事労務分野等の企業法務の他、幅広く訴訟対応も行っている。
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アソシエイト弁護士
佐賀県出身、立命館大学法学部卒業、立命館大学大学院法務研究科法曹養成専攻修了。2010年弁護士登録。
事業再生・M&A・契約書のブラッシュアップ・人事労務・債権回収等の企業法務の他、事業承継に伴う相続案件にも携わっている。
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