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「キャリアメモ」で過去の自分を総括する
■「キャリアメモ」で自分を評価する
「キャリアレコード」は、過去の自分を客観的に検証するための記録です。その客観的な評価を記述するのが「キャリアメモ」です（図2）。
「キャリアレコード」を作成する際、主人公となるのはあくまでも「当時の私」です。当時の自分の視点に立って、キャリアストーリーを具体的に記述し、そのときの気持ちをそのまま書くことが求められます。
一方、「キャリアレコード」を作成した後、過去の自分を総括するのは「現在の私」です。視点を過去から現在に戻し、「当時の私」が行ったことを冷静に評価する。「キャリアメモ」では、「キャリアレコード」に記述したことが、「現在の私」に影響を及ぼしているとすれば、何がどのように影響を及ぼしたかを評価するのです。
「キャリアメモ」は具体的には、「キャリアレコード」に書き込んだ「出来事」や「出会い」を振り返ったときに湧き上がる思いや感慨、あるいは、「成果」によって自分がどのように成長できたかという総括などを記入していきます。
「キャリアレコード」と「キャリアメモ」の書き分けが難しいようでしたら、「キャリアレコード」はビジネスパーソンとしての記録、「キャリアメモ」は自分史の〝作家〞の視点で書く自分の総括と考えればいいでしょう。
「キャリアレコード」は過去の記録ですが、「キャリアメモ」を作成することにより、作家が過去の人物を蘇らせるように、「当時の私」と「現在の私」をつなげることができるのです。次に、「キャリアメモ」を作成するための、仕事歴、学習歴、経験歴の棚卸しの仕方を示します。
■仕事歴の棚卸し――どんな仕事力を培ってきたかを自覚する
ビジネスパーソンは、仕事を一つひとつこなしていく過程で、さまざまな能力、すなわち、仕事力を蓄積してきたはずです。
社内の異動や昇進のたびに職務が変わってきたならば、どのような能力を身につけて、その職務を遂行してきたか。転職を経験したならば、新しい仕事に挑戦するなかで、どのように能力の幅を広げてきたか。
さらに、参画したプロジェクトやそこでの担当、仕事の内容、成果などを振り返ると、自信が持てるようになった能力やそれをどんな分野で発揮したかがわかるはずです。あるいは、上司や同僚、仕事先の人からの評価を参考に、どんな能力に優れていたか、自分なりの評価をしてみることです。企画力に自信がついた、メンバーの力を引き出すマネジメント能力で実績を積んだ、仕事を総合的にとらえる広い視野を持つようになった……等、自分の仕事力の向上ぶりを表現してみましょう。
■学習歴の棚卸し――いままでに学習で得たものは何か
ビジネスパーソンは、仕事に必要と思われる分野について、さまざまなことを学習し、多様な知識を獲得してきたはずです。社内外の勉強会や研究会、セミナーへの参加にしろ、書籍の選択にしろ、仕事に関連したものが多かったでしょう。
もちろん、仕事には直接関係しなくても、個人的な関心や趣味から学び、習得したことも学習の成果で、それが結果的に、仕事に対する多様な視点をもたらしたこともあるでしょう。
それらの学習の成果を整理し、その意義をとらえ直してみると、それをこれからどう活かせるか、その可能性が見えてきます。
■経験歴の棚卸し――自分に影響を与えた経験を振り返る
社外での異業種交流会、国内外への旅、ボランティア活動、組合活動、サークル活動……等々、誰もが仕事を離れた場で多様な経験を積んできたはずです。
特別な出来事ではなくとも、出会った人々との交流や自分がかかわった活動のなかで気づかされたり、発見したことでもかまいません。自分が影響を受けたこと、印象に残るものを拾い上げてみることです。
それらの経験から自分が得たもの、発揮した能力を成果としてとらえ直してみる。仕事歴や学習歴だけでなく、経験歴も掘り起こし、客観的に把握しておくことも、次のキャリアステップへとつなげるうえでとても大切です。
久恒 啓一
多摩大学名誉教授・宮城大学名誉教授
