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2021年末〜22年初のメディア報道の「ばらつき」
2021年12月、党機関誌人民日報が11月の第6回中央委員会全体会議(6中全会)に関連して掲載した陳希中共中央組織部長の論評が後継者(接班人)問題を論じたことは極めて異例。「優秀な人材を育成できるかどうかが党と中国の存亡を決める。若いほどよいという話ではなく、政治基準が最も重要」とし、習氏が後継問題について沈黙していることに党内で不満がくすぶっていることを反映したものとの見方がある。
ただ、単なる若返りのための指導層交代を否定したという意味では、3期目を狙う習氏への援護射撃とも解釈できる。
江沢民・曽慶紅派と目される曲青山党史文献研究院院長は、人民日報や党刊「求是」に「改革開放は党の最初の偉大な覚醒」と題する論評を掲載。近年では珍しく習氏や毛沢東に触れず、6中全会で採択された歴史決議の鄧小平と江沢民・胡錦濤両氏の時代に焦点を当て、これら3氏の名前、特に鄧に9回言及。こうした論評で誰に言及するか(しないか)は極めて敏感で重要なことは周知の事実で、単にうかつということはあり得ない。
改革開放時代に絞った論評で、習氏への言及がないことは不自然ではないが、①習氏と江曽派の対立という構図のなかで、自らの功績で特段宣伝できるものがない江曽派が、広く共感を得やすい鄧の改革開放を錦の御旗にして、習氏が鄧路線から離れようとしていると暗に批判、②習氏自身が改革開放と関連付けられることを好まず、自身の「歴史功績」は「新時代」にあることを示したいとの意向が強いなど様々な憶測がある。
習氏のあいさつから「改革開放」への言及が消失
曲論評と軌を一にして、解放日報は胡偉上海公共政策研究会会長の「改革開放路線堅持」と題する論評を掲載し鄧に8回言及。習氏には鄧の講話を引用したという文脈でのみ言及。さらに親中で江曽派と目される海外華字誌多維新聞は房寧社会科学院政治学研究所元所長のインタビュー記事を掲載。
かつてゴルバチョフ氏がソ連解体の原因を問われた際、「個人的に自分が最も尊敬するのは鄧小平だが、ロシアに鄧はいなかった」と述べたことを紹介し、旧ソ連の失敗に対し、鄧が成功したのは、①旧ソ連の「向後看」「単向度」、後ろ向きで一面的なアプローチに対し、「向前看」「両点論」、前向きかつ経済建設を中心に置き改革開放原則を堅持する弁証法的二面アプローチを採った、②旧ソ連のトップダウンで全てを1つのバスケットで進める「一攬子計画」に対し、常に実践重視の「摸石頭過河」、石橋を叩いて河を渡る慎重姿勢だった、③最大の要因は新世代が「前台」、老世代が「後台」に立ち、徐々に政権を新世代に移行する「政治継承」の枠組みを築いたこと(未だ後継について語らない習氏を暗に批判)として鄧を称賛。
他方、人民日報は同時期に江金権中共中央政策研究室主任の論評を掲載。こちらは歴史決議の習政権の「党の全面指導強化」に絞った記述で、習氏に7回、毛に2回言及し、鄧、江・胡両氏には言及せず。「改革開放以後、党指導に対する党内意識が曖昧になり、党指導が弱化、形骸化、希薄化、党中央の政策執行能力が低下」「改革開放という環境下で党指導改善を模索するなかで、その内容と方式に偏りが生じたが、偏りは(習新時代の始まりである2012年の)第18回党大会以降、やっと取り除かれた」と論じた。
習氏の2022年国民向け新年あいさつからは、それまで毎年言及していた「改革開放」が消えた。
さらに、2022年1月18日は南巡講話(鄧小平が1992年1月18日〜2月21日、武昌(湖北省)から始まり、広州、深圳、珠海、上海などで行った一連の講話で、「発展こそ根本的道理(硬道理)」などと述べ、その後の改革開放を方向付けた)の30周年に当たるが、深圳特区報を除き、南巡講話を祈念する官製メディア報道や党・政府の紀念活動など目立った反応がみられないことは異常と注目されている(海外華字メディアの中では、多維新聞が特集欄を設け、1月18日〜1月末、11回に分けて記事を連載)。
他方、対外的には海外の懸念を意識してか、2022年1月18日世界経済フォーラムでのオンライン会議で習氏が行った演説は、昨年建党100年を迎えた中国は社会主義現代化国家全面建設に踏み出したとしたうえで、「国際情勢にいかなる変化があろうとも、改革開放を揺るぎなく(堅定不移)推進。中国の改革開放は永遠に路上にある」と述べている。
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