強調される「穏」の文字は、厳しい現状認識の証左
工作会議公報は「安定(穏)」の文字に25回言及。中国経済が需要不足、供給ショック、弱い予測期待(預期)の三重圧力に直面しているとし、2022年の経済運営は「六穏(就業、金融、貿易、外資、投資、預期の安定)」、「六保(就業、民生、市場主体、食糧・エネルギー、産業・サプライチェーン、末端組織運営の安定確保)」、「穏字当頭、穏中求進」、つまり安定を最重要としそのなかで進歩を求めるとし、積極財政政策と穏健な金融政策の継続、各地区・部門に安定に資する政策を積極的に採るよう指示。
「穏」の異例の強調は、裏を返せば、それだけ当局が現状は「不穏」と認識しているということだ。
幹部が経済の現状や見通しに関し意見の相違を公にすることは政治紀律面ほど微妙ではないのか、論客で知られる楼継偉元財政部長(大臣)が工作会議直後のフォーラムで「三重圧力と言うが、統計はそうなっていない」と公式統計の欠陥に言及したが、国家統計局長は「統計操作の問題は2018年に解決済みで過去の話」と反論。
しかしその後、中共中央・国務院弁公庁は各省市区と国務院関係部門が原則5年毎に統計の通常監察を行い、統計操作など特に問題がある場合は専門監察を行うとした統計監督職能に関する意見発出。国家統計局は年末の統計工作会議で22年統計業務の重点任務の1つとして統計モニター強化を掲げた。また2022年1月、国家統計局幹部も出席した中央紀律検査委員会では、統計ねつ造を防止し厳しく取り締まることがうたわれた。
統計から確認できる「三重圧力」
ただ、統計局が記者会見でも説明しているように、三重圧力は統計から確認できる。
成長率は第1〜4四半期、18.3%、7.9%、4.9%、4.0%と傾向的に鈍化。需要面では消費小売販売額が21年初の2桁伸びから年後半1桁伸びに鈍化(前年比3月17.7%増→12月1.7%増)。都市部固定資産投資や不動産投資も鈍化(各々前年比1〜3月25.6%増→通年4.9%増、同25.6%→4.4%)。供給面では一次産品国際価格上昇に伴い工業生産者出荷価格指数(PPI)が急上昇(年初前年同月比1%台→年後半10%以上)。エネルギー・金属供給が逼迫し、自動車産業が半導体不足の影響を受けている。
期待面では製造業購買経理指数(PMI)が4月以降低下。全体では9、10月、小企業は5月〜2022年1月9ヵ月連続景気判断の分かれ目の50を切った。非製造PMIは新型コロナの影響で激しく変動する中、基調として低下(4月〜2022年1月47.5〜54.9)。
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