※写真はイメージです/PIXTA

中国が毎年末に開催する中央経済工作会議は翌年の経済運営の基本方針を討議し、経済面では中国内外で最も注目されている会議だ。2021年12月に開催された同会議前後の動きから、当局の中国経済に対する現状認識と政治動向に関する様々な手がかりを探る。

様々な憶測を呼んだ、公報での「異例の表現」

公報に幾つか異例の表現があり、特に反中(習)色の強い華僑ネットワークで様々な憶測がある。

 

第1は「経済建設中心を党の基本路線とし、党挙げてこれを集中貫徹」。かつて鄧小平が多用したが近年なかった表現で、代わりに「党中央集中統一指導」「党建設」などが強調されてきた。経済の現状認識が厳しくなっているということだろうが、政治的憶測もある。「党建設」などを強調してきたのは言うまでもなく習氏で、党内の批判の矛先が「経済建設」を軽視し鄧路線を否定しようとしている習氏に向かっているとの見方だ。

 

第2に「政策調整や改革推進ではタイミング、程度、効果(時度効)を把握し、先に新制度を作ってから旧制度を壊し(先立後破)、事を着実に進めること(穏扎穏打)」とされた。2021年、習政権が急に大企業資本や不動産金融への締め付けを強化したが、そうした不安定な経済政策が経済低迷を招いたという習政権に対する批判を示すものとの解釈である。

 

第3に「指導者(領導)は経済面の業務遂行で客観的実情と人民のニーズを尊重すること。経済発展は1つの系統的プロセスであることを認識し政治経済を総合的に考慮。経済学の知識を強化し科学知識を学習する必要」とされた。これも、世界第2の経済大国が電力不足で工場閉鎖に追い込まれるなど、習氏の経済政策の「失敗」に対する党内の不満を示すもの、または習氏に対する揶揄との見方だ。ただこうした見方はもっぱら反習筋から出ている。「領導」は一般的に指導層全体を指す用語で、単に習氏が李克強首相を初めとする経済担当幹部に対し不満を示しただけとも解釈できる。

 

第4に直前の政治局会議では、近年こうした会議では必ず言われていた「房住不炒」、つまり住宅は住むもので投機するものではないとの文言が消え、不動産市場低迷(主要70都市新築住宅価格は2021年6月ごろまで約8割が前月比上昇していたが、10~12月は逆に7~8割が低下)を受けた不動産政策の方針転換かと注目されたが、工作会議では再びこの文言が現れた。

 

当局は10月以降銀行に対し、「合理的ニーズと認められる担保付不動産融資」増加を指示するなど政策緩和の動きを見せる一方、12月の1年物最優遇貸出金利(LPR)利下げの際、不動産融資金利がリンクしている5年物LPRを据え置いた(その後、2022年1月の利下げの際には、21ヵ月ぶりに5年物も引き下げた)。

 

肯定的に言えば、経済政策については自由な議論が行われ、実態に合わせ政策が柔軟に見直されているということだが、経済低迷の原因や対応について、党内で様々なせめぎ合いがあることを窺わせる。

 

(注)保障性住宅を含まない。 (資料)中国国家統計局「70大中城市住宅販売価格変動状況」より筆者作成
[図表6]新築商品住宅価格(前月比) (注)保障性住宅を含まない。
(資料)中国国家統計局「70大中城市住宅販売価格変動状況」より筆者作成

 

次回は、2021年年末から2022年年明けにかけての党機関誌「人民日報」などの記述から、さらに問題を掘り下げ、洞察する。

 

 

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