(※写真はイメージです/PIXTA)

2022~23年にかけて、世界に名だたる名門全寮制学校が日本で開校ラッシュとなるのをご存じでしょうか。 日本ではまだなじみの薄い「全寮制」というスタイルで、年間授業料はサラリーマンの平均年収を軽く上回ります。一体、どのような教育が行われるのでしょうか? 日本の小学校・中学校受験をテーマに小説・コラムを執筆する佐野倫子氏が、バイリンガルエリート教育の最前線をレポートします。

なぜ、あえて「全寮制」を選ぶのか?

現状、意識の高い保護者のレッドオーシャンは小学校・中学校受験です。都心の人気中学受験塾は、一部校舎でなんと幼稚園年長児に入塾を締め切るなどという事態も。コロナ禍を経て、手厚いケアが期待できる私立に進学させたいと思う保護者が増えたのか、2022年の中学受験に参戦する子どもの数は増加見込みです。

 

しかし、ハイエンドかつ時代の潮目を読むことに長けた保護者は、レッドオーシャンに参戦せずにさらなる活路を見出します。アフターコロナの激動の時代、日本という国に拘る必要性も薄れつつあります。選択肢を「持てる」人々が、真のグローバル教育・バイリンガル教育を求めた結果、行きついたひとつの解がボーディングスクールなのです。

 

なぜあえて全寮制の学校を選ぶのか。まずは実際にお子さんを入学させた加藤由佳さんに伺いました。

 

写真:加藤由佳さん
写真:加藤由佳さん

 

「息子は、13歳のときハロウバンコク校に入学しました。当時は、得意なことと言えば運動くらいで、体も小さく野生児のよう。親から見て際立ったところはありません。だからこそ、私はすべてをおまかせする気持ちで全寮制の学校を選びました。結果的に、ハロウは息子の可能性を最大限に広げてくれました。

 

世界のトップ20に名を連ねるエジンバラ大学に入学した彼は、現在フォーチュン500の企業で働いています。でも私が本当に素晴らしいと思うのは、彼の履歴書にあらわれないような活動ですね。彼はユニセフ大学支部で会長、最終的には24の大学の総代表を務めるなど、リーダーシップを存分に発揮しています。自分は気づくことのできなかった才能と可能性を見つけ出し、成長させてくれただけでなく、このようなマインドが身につく、人間性を含めた包括的な教育こそがボーディングスクールの素晴らしさだと思います」(加藤さん)

 

さらに加藤さんは、全寮制の当事者しか知り得ないメリットにも言及。全寮制であるがゆえに通学時間が不要で、24時間をフルに使い、学業以外にも最高レベルの指導を受けられることだといいます。

 

■超エリート階級だけに求められる「必修要素」

「プロのコーチを招聘しておこなわれるミュージックフェスティバル、スキー、テニス、マウンテンバイク…あらゆる角度から、その子の潜在能力を刺激してくれます。習い事・課外活動の範疇を超えていて、この環境を親が個人でつくりだすことはほぼ不可能です。人間力をトータルで養うことができる環境に、この授業料は決して高くないと思います」

 

ご存じの通り、グローバルエリート人材には独特の社交術が必要です。社会的に高いポジションにつけば、ゴルフ、馬術、スキー、テニス、ボート、音楽の素養などを人前で発揮するシーンが必ず来ます。さらにビジネスシーンではプレゼンテーションスキルや異文化で協働した経験が必須でしょう。これまでの日本は学歴に偏重してきましたが、アッパークラスに必要なスキルを万遍なく、しかも望めばプロも目指せるほどのレベルと自然環境で体験させてくれる学校の登場は朗報です。

 

治安がよく公衆衛生の優れた日本にこのようなボーディングスクールができたことは、コロナ禍において世界中のアッパークラスでも大きなニュースになったそうです。

 

しかし、それでも実際に我が子をボーディングスクールに送り出すのは、心理的にもハードルが高いもの。そこで子どもたちは実際、どのように暮らし、学んでいるのでしょうか? 

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