退職金は余裕資金ではなく老後の大切なお金です。老後資金はいったん減らしてしまうと、取り戻すことが非常に難しいものです。退職金の使い道は慎重に検討する必要があります。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏の著書『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)より一部を抜粋し、「退職金」にどんなワナが待ち受けているか見ていきます。
70歳まで働いても老後資金枯渇…自営業者、起死回生の年金倍増計画【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

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ステップ④73歳まで働いて、貯蓄の上積みを!

ポイントは、70歳以降のプランニングです。

 

自営業の強みは、定年がないこと。いつまで働くかは、自分の裁量で決められます。

 

小林さんは自分の焼くパンに自信を持っていますし、何よりこの仕事に生きがいを感じています。だから、できるだけ長くお店を続けていきたいのが本音です。

 

いまどきの70歳はまだまだ元気ですから、希望はかなうと思います。

 

とはいえ、体力の衰えはいかんともしがたく、健康面は心配です。営業日や営業時間を見直し、休みを多く取る必要があるかもしれません。それにともなって売り上げも落ちていくでしょう。そうした収入減も見込んでプランニングをします。


 
73歳まで働き、老後資金を増額する方法です。

 

2022年4月からは、75歳まで繰下げ受給が可能になります。繰下げ受給を延長して年金の受給額を増やす方法もありますが、これだと繰下げている間の生活費が持ちません。ですので、資金の増額を考えます。

 

出典:長尾義弘著『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)より。
出典:長尾義弘著『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)より。

70歳以降のプランニング

70歳~73歳 時短営業 売り上げ月33万円(年間400万円)

 

働いている期間は、年間約300万円の貯蓄ができます。3年間ですので、約900万円の老後資金を増額することが可能です。

 

このプランによって、なんとか100歳までは、老後資金を持たせることができました。また、90歳の時点でも1000万円の資金が残っています。老後生活も安心できる状態になりました。

 

残念ながら、収支のバランスは、黒字にすることはできませんでした。そのぶん、老後資金が多めに必要なのです。

 

最終的には73歳まで仕事を続けることになりましたが、生きがいを持って長く働くことは健康にもつながります。健康に不安を感じれば、支出をもう少し抑えることを考えたほうがいいでしょう。逆に、元気でもう少し働けるなら、もっと生活に余裕が出ると思います。経済的に楽になり、心にもゆとりができたら、老後生活はますます充実するはずです。

 

いつまでも元気で頑張ってほしいですね。

 

ただ、小林さんは厚生年金に加入していないので、遺族厚生年金がありません。配偶者が亡くなったときは、収入が半減します。そういう意味でも、国民年金基金や貯蓄という余裕資金が大切になってきます。

 

いずれにしろ、早めにプランニングを行なうことが、老後生活の不安を解消するコツです。

 

長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員
大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、近著に『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)などがある。

 

 

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