(写真はイメージです/PIXTA)

令和4年度『税制改正大綱』では「相続・贈与の一体課税」に向けた具体的な改正に関する記述はありませんでした。しかし、「相続・贈与の一体課税」へと向かう基本的な考え方には昨年度から変更はなく、継続的な検討課題とされています。本記事では、今後の「相続・贈与の一体課税」に関する改正の見通しと検討すべき節税方法などを公認会計士・税理士・行政書士の資格を持つ、会計事務所Lirioの野口裕太氏が解説します。

影響があるのは富裕層ではなく「中間層」

ここまでみてきた今後の予想(改正の方向性)ですが、富裕層だけの問題ではなく、実は一般家庭にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。

 

というのも、従来であれば暦年贈与(110万円の非課税枠の範囲内)を活用することで、贈与税を払うことなく相続財産を基礎控除額以下とし、相続税を回避することができた層が、生前贈与加算の対象期間延長により相続財産を圧縮することができず相続税の課税対象となってしまうのです。

 

また、富裕層のように資産の組換え(不動産の活用)など暦年贈与以外の節税対策を講じることも難しいと考えられます。

節税目的での「駆け込み贈与」のポイント

来年度以降、「暦年贈与税制の廃止」や「生前贈与加算の期間延長」といった改正がなされる可能性は高いと思われますが、改正内容が遡って適用される可能性は考えにくいため、「暦年贈与税制」のメリットは最後まで最大限に活用すべきです。そんな駆け込みでの贈与を検討する際のポイントは以下の通りです。

 

孫への贈与

 

110万円の非課税枠は受贈者ごととなっています。そのため、子や配偶者だけでなく孫なども贈与の対象に加えることで非課税枠を最大限に活用することができます。

 

また後述の110万円の非課税枠を超えて贈与を行う場合でも、個々の贈与額を分散することで累進税率を抑えることが期待されます。

 

現行の税制では、孫が相続または遺贈により財産を取得する場合を除き、生前贈与加算の対象とならないため、相続税を一代スキップできるという観点からも非常に有効です。

 

110万円の非課税枠を超えて贈与

 

そもそも相続税の節税を目的とする場合、非課税枠にこだわる必要はありません。より多くの財産を残すためには、相続税と贈与税、全体としての税負担を低く抑えることが重要となるため、相続税の適用税率より贈与税の適用税率が低いのであれば贈与すべきとなります。

 

もっとも効率のいい贈与額については相続財産の規模や内容、予定税額などをしっかりと把握し検討する必要がありますので、必要に応じて相続税専門の税理士へご相談下さい。

 改正(相続・贈与の一体課税)後の節税方法

従来の暦年贈与が廃止された場合でも、次のような節税方法が考えられます。

 

■生前贈与

収益不動産の贈与(早期の所得移転による相続財産の抑制)

住宅取得資金贈与や教育資金贈与等の制度があれば当該制度の活用

 

■贈与以外の選択肢

資産の組換え(不動産、小口化商品等の活用)

親名義での不動産購入

 

いずれも従来から用いられてきた方法ではありますが、暦年贈与というわかりやすい節税方法が廃止された場合には、改めて検討してみてはいかがでしょうか。

 

以上、いかがだったでしょうか。施行された場合には非常に大きな影響を及ぼす改正となりますので、引き続き動向には注意を払っていきましょう。

 

 

野口裕太

会計事務所Lirio

公認会計士/税理士/行政書士

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧