2004年の年金改革のあらまし
急速に進む少子高齢化に対応するため、2004年に年金改革が実施された。当時の小泉政権のもとで年金改革を主導したのは公明党だ。公明党はこの年金改革について、「100年安心」プランと自画自賛した。
2004年の年金改革のポイントはいくつかある。
ひとつ目のポイントは、「現役世代の保険料支払いの上限を決めた」ことだ。国民年金は月額1万6900円、厚生年金は標準報酬月額(給与)の18.3%が上限。2004年時点では、国民年金は1万3300円、厚生年金は13.58%だったので、国民年金は3600円、厚生年金は4.72%の負担増となる。そして、2017年まで、年金保険料は随時引き上げられる。
現役世代の保険料支払いの上限を高めに設定して国民にいっそうの負担を求めたのは、将来の現役世代の負担増を、現在の現役世代も分かち合おうとの主旨だそうだ。
ふたつ目のポイントは、「高齢者世代の年金給付の下限を決めた」ことだ。最低限、現役世代の平均収入の50%を給付するという内容である。
少子高齢化が進む中、現役世代は将来どれだけ年金保険料の負担が増えるのか不安になる。また、高齢者世代も将来どれだけ年金が減らされるのか不安になる。
2004年の年金改革は、そうした現役世代と高齢者世代の不安を一掃しようというのが狙いだ。
不足分の捻出はどこから?
では、肝心の年金給付の財源は大丈夫なのか。いわゆる年金財政の問題である。
2004年度の改革では、現役世代の保険料収入をベースに、年金積立金の取り崩し、年金資金の運用益、そして税金の投入(基礎年金の1/2負担)で賄うと言う。これが年金改革の、3つ目のポイントだ。
驚くべきは、「今後100年間で年金積立金を全部使い切ってしまおう!」というその内容である。
公明党が「100年安心」プランと胸を張るのは、年金積立金の取り崩しが前提だからなのである。年々の年金給付の不足は、今まで貯ためた積立金を取り崩せばよいと言う。
「世代間扶養」の賦課方式は、現役世代の年金保険料が高齢者世代の年金給付に充あてられるのが基本。したがって、意味もなく多額の年金積立金を積み立てておく必要はない。
向こう100年間で現在の積立金を取り崩せばよく、そして、100年後の年金積立金は、年々の年金給付の額だけに縮小する・・・。
100年間で年金の支払いと給付の額を均衡させようとの考えだ。100年に限定したのは、現在生まれた子供の最長寿命を想定したからである。
要するに、年金を支払うお金がないので、今まで積み立てたお金に手をつける。今まで貯めた貯金を取り崩して生活費に充てる個人と同じ姿だ。
安易過ぎはしないか。はたして計画通り、100年ももつのか。
取り崩しを許可された大金があれば、あれこれと理由をつけられ、消費されるリスクもあるだろう。それに、どんな不測の事態が起こるかもわからない。少子高齢化のさらなる進展、経済の悪化などによって、保険料収入が激減するかもしれない。
こういった場合、積立金の取り崩しが100年どころか、数十年すらもたないことも考えられるのだ。
ただ、これらの指摘については、政府も抜かりなく奥の手を用意している。
2004年の改革によれば、デフレ期のように経済が悪化して賃金や物価が下落したときには、「マクロ経済スライド」が発動される。それにより、年金給付の引き下げが行われるのである。この「マクロ経済スライド」の導入が年金改革の4つ目のポイントである。