「軽トラ運送業」はトラック運送業とは異なり、車両一台で開業できるため、個人事業主によって営まれることが多い。ネット通販の普及により2010年代半ば以降、新規参入が相次いでいる。物流ジャーナリストの刈屋大輔氏は2019年5月、個人事業主として2年目となる竹田勝さん(仮名)の軽トラに同乗し、取材をおこなった。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
40代・既婚男性が脱サラ「週6日労働、体重10キロ減。手残り35万円」軽トラ運送業の光と闇 (※写真はイメージです/PIXTA)

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週6日、毎朝5時に起床…朝から1時間もの「重労働」

竹田さんの朝は早い。月曜日から土曜日までの週6日、毎朝5時に起床し、朝食や身支度を済ませて6時には家を出る。

 

15分ほど軽トラを走らせて向かう先は、都内某所にある宅配便大手の配送デポ(営業所)だ。到着するとすぐに、その日の午前中に配達する分の積み込み作業を開始する。

 

自分が担当するエリアの荷物がカゴ車に山積みされている。それを車両に寄せて、次から次へと荷台に載せていく。素人眼には右から左へ単純に移し替えているだけに映るが、実は違う。

 

午前中の早い時間帯に回る届け先の荷物は荷台の取り出しやすい場所に、遅い時間帯の分は奥に、その日に配る順番を頭の中でシミュレーションし、さながら“立体パズル”のように荷台のスペースを埋めていく。

 

物量が多くて荷物が載り切らないと途中でパズルを組み替えたりする。そのため、積み込み作業には通常1時間程度を要する。もちろん、すべて手作業で、助っ人(作業補助員)はいない。朝一番からかなりの重労働だ。

 

「確かに積み込みはきつい作業だけど、これをデポ側のスタッフにお願いするわけにはいかない。

 

契約上、積み込み作業が受託業務の範囲に含まれているというのもあるけれど、自分でその日の配達分を荷台のどの部分に置いたのかをきちんと把握しておく、という意味でも大切な作業だ。

 

他人に任せたら、荷物がどこにあるのかわからなくなって、かえって探すのに手間と時間が掛かってしまう」と竹田さん。

 

その後、伝票整理や点呼などを済ませて、7時半前には配送デポを出発、配達に向かう。配送デポでは正式な出発時間を午前8時に設定している。

 

しかし、多くのドライバーたちが、それよりも前に配達を始める。その日に一つでも多く荷物を“落とす”(配達を完了する)ためだ。フライングして配達を始めることによって、不在を回避できる届け先もあるという。