きつい上に稼げなくなってしまったトラック運送業界は、慢性的な人手不足に陥っている。ドライバー不足を解消するため、新たな担い手の創造や生産性の向上など、あらゆるアプローチがとられているが…。ここでは「宅配ロッカー」について、物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
宅配ドライバー不足「再配達は削減したい」…ユーザーに響かない事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

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再配達に要するドライバー「年間約9万人」からの脱却

■ドライバーのいらない仕組みをつくる

 

女性や外国人の活用は、ドライバー不足を、新たな担い手を創造していくことで補っていこうという試みだ。これに対して、輸配送の生産性を高めていくことで、必要となるドライバーの絶対数を抑えようというアプローチもある。

 

例えば、宅配便の分野では、年間に約9万人相当のドライバーを要しているとされる再配達の件数を減らしていくことで、この問題を解決しようとしている。その具体的な施策の一つが、「宅配便受け取りロッカー」の設置だ。

 

「宅配便受け取りロッカー」は、鉄道駅など公共性の高いスペースや、スーパー、コンビニなどの店舗に置かれている。通勤・通学や買い物のついでに、宅配便のユーザー(荷受人)にそのロッカーまで荷物を取りにきてもらうことで、再配達を減らす取り組みだ。政府は2017年度に設置費用の50%を補助する制度を創設するなど、宅配ロッカーの普及促進を後押ししてきた。

 

ヤマト運輸では、フランスの郵便機器製造会社ネオポスト(現クアディエント)との合弁会社である「パックシティジャパン」を通じて、宅配ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」の設置を進めている。その数は全国約4000ヵ所に達する。設置場所は駅や小売店鋪のほか、「宅急便」を扱う自社営業所など。2022年度までに全国5000ヵ所への設置を目指す。

 

「PUDOステーション」の特徴の一つは、共同利用型であることだ。使用料を支払えば、他の宅配便会社も利用できる仕組みになっている。実際、2017年10月からは佐川急便や、国際宅配便を手掛けるDHLジャパンが「PUDOステーション」を活用している。

 

共同利用には、各社がそれぞれにロッカーを設置するのに比べ、投資負担を抑制できるほか、複数の宅配便会社からの荷物を1ヵ所で荷受けできるようになり、ユーザーの利便性も向上するというメリットがある。