【関連記事】「荷物受け入れ拒否」に顧客は怒り心頭…ヤマトが“強気に出た”ワケ
「諦めムード」漂うドライバー人材確保
総務省の「労働力調査」によれば、トラック運送事業に従事する就業者数は全体で約196万人(2019年)。このうちドライバー職(輸送・機械運転従事者)に就いているのは約87万人(同)で、その数はこの10年間、横ばいもしくは微増で推移している。
統計データを見るかぎり、ドライバーの数は決して減少しているわけではない。にもかかわらず、業界としてドライバー不足に危機感を強めているのは、高齢化の進展が加速する一方で、将来の活躍が期待される若年層の確保が思うように進んでいないためだ。
実際、トラックドライバーの年齢別構成比は、40歳未満が全体の27%であるのに対し、50歳以上が42.8%を占めており(2019年)、高齢ドライバーへの依存度が高い。
若年ドライバーの雇用拡大に向けた「準中型自動車免許」制度は2017年にスタートした。
これを受けて、業界団体である全日本トラック協会では、同免許の取得費用の一部を負担する助成事業を開始し、トラックドライバーの若返りを進めようとしている。
しかし、そもそもいまの若者は自動車の運転そのものや、運転に必要な免許を取得することへの関心が低い。そのため、「準中型免許の新設や免許取得費用の助成といった取り組みは、それほど効果が期待できないのではないか」(トラック運送業界の関係者)といった声もある。
トラックドライバー職が魅力のある仕事であれば、若者たちを呼び込めるかもしれない。
ところが、トラックドライバーの賃金水準は全産業平均よりも1〜2割程度低い。そのうえ労働時間は他産業よりも長い。
もっとも、ここ数年は人手不足を背景に運賃の値上げに成功し、それを原資にした賃金の上昇も見られた。
ただし、新型コロナ以降、荷動きの低迷でトラック運送会社の収益は悪化。業績の大幅な落ち込みを受けて、今後は運送コスト全体の約4割を占める人件費(ドライバーの賃金)にメスが入る可能性も否定できない。
そうなれば、トラックドライバーはますます集まりにくくなるだろう。政府や経済界、業界団体は、新たな輸送の担い手として外国人労働者や女性の活用を模索している。
このうち外国人ドライバーは実現に漕ぎ着けるまでに乗り越えなければならないハードルが多い。日本で働く外国人がトラックのハンドルを握るようになる日はまだ先だろうし、そもそも政治的判断から就業そのものが認められない(緩和されない)可能性もある。現状の期待値はとても低いと言えるだろう。
女性の活用も“ノロノロ運転”の状態が続いている。国土交通省は2014年に「トラガール推進プロジェクト」を立ち上げ、専用サイトでの情報発信などを通じて女性労働者にトラックドライバーへの就業を促しているが、大きな成果を上げるまでには至っていない。実際、同プロジェクトがスタートして以降も、国内の女性トラックドライバーの数は2万人台で低迷している。