きつい上に稼げなくなってしまったトラック運送業界は、慢性的な人手不足に陥っている。ドライバー不足解消の具体策として、経済同友会は「大型自動車免許を有する女性と外国人ドライバーの活用」を提言したが、果たして…。実現に向けた取り組みを、物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
“危機的な人手不足”のトラック運送業界…「外国人ドライバーの雇用」が進まない根本原因 (※写真はイメージです/PIXTA)

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「ドライバー職」は、なぜ女性に敬遠されるのか

■女性ドライバーはわずか2万人

 

近年、トラックのハンドルを握る女性の姿を目にする機会が増えている。しかし実際には、女性のトラックドライバー就業率は極めて低い。

 

国内の全産業における女性の就業者数約2992万人のうち、同じ3K(※)職場とされる「建設業」では約84万人が働いているのに対し、ドライバー職に就いているのはわずか約2万人にすぎないのが実情だ。

 

※ トラックドライバー職は長らく、「きつい、汚い、危険」の3K仕事と言われてきた。

 

大型自動車免許を有する女性は13万人に上る。にもかかわらず、ドライバー職が女性に敬遠されるのは、①労働時間が長い、②長距離輸送では日帰り勤務が困難なため子育てに支障を来す、③荷物の積み降ろしなど重労働を強いられる、④更衣室や洗面所などアメニティー施設が充実していない――ためだ。

 

また、ハンドル操作の難しい大型トラックを運転すること自体に不安を抱えている傾向もあるという。

 

これを受けて、経済同友会が2020年6月に発表した報告書「物流クライシスからの脱却〜持続可能な物流の実現〜」では、女性の就労を促していくために「自動車メーカーの協力を得て、『女性が運転し易い車両の標準形』を示すべき」だと提言する。具体的には、運転席での乗降時に転落するのを防ぐためのグリップ設置など、女性に配慮した構造設計を施すべきだと指摘している。

 

女性ドライバーを強く意識したトラックの開発・導入は、すでにトラック運送会社の独自プロジェクトとして始まっている。

 

例えば、食品物流を展開するアサヒロジスティクスでは2020年3月、女性専用の配送車両「クローバー」(1〜4トンクラス)の導入をスタートした。現在では関東エリアの3事業所で計5台を運用している。