リーマンショックのときの「派遣切り」や「雇い止め」の原因は、「新自由主義」の下での規制改革にあると考える人々がいる。しかし、派遣解禁などの規制緩和こそが「消費者の利益を増大させ、雇用を増やした」のだと前日銀副総裁・岩田規久男氏は解説する。 ※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「雇用が悪化した理由」の“誤解”…タクシー規制緩和は、運転手の生活を「滅茶苦茶にした」か【前日銀副総裁が解説】 ※写真はイメージです/PIXTA

「規制緩和のたびに所得補償をする」のではなく…

食料品輸入の増加は、国内でそれらの食料品を生産していた農家や水産業者の所得の減少という犠牲を伴った。しかし、日本人全体の消費者の利益のほうが彼らの所得の減少よりもはるかに大きかった。

 

規制緩和や輸入関税の引き下げの際には、それによって所得が減少する生産者に所得補償したり、転作のための支援金を公的に補助したりして、彼らの犠牲(規制や高い輸入関税によって守られていた既得権益を失うこと)を和らげる政策がとられることが多い。しかし、そうした政策がとられるかどうかは、生産者が失う損失の程度に依存する。

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さまざまな既得権益を守る規制が緩和され、輸入関税が引き下げられれば、規制緩和や輸入関税の引き下げで損失を被った人も、他の多くの規制緩和や輸入関税の引き下げによって、消費者として利益を得、全体として見れば、損失以上の利益が得られる。

 

したがって、規制緩和のたびに所得補償をしたり、転職を支援するだけでなく、理由にかかわらず所得が低下した人を支援するセーフティネットを整備することが不可欠である。

 

 

岩田 規久男

前日銀副総裁