私募リート投資における建築基準法等の規制に関するリスク

前回は、私募リート投資における「不動産PM会社」に関連したリスクを取り上げました。今回も引き続き、私募リートのリスクについて見ていきます。

事故や天変地異に備えた保険に入ってはいるが・・・

前回の続きです。

 

(7)建物の毀損・滅失・劣化に関するリスク

建物の全部または一部は、突発的な事故、地震や風水害等の天災地変によって、毀損、滅失または劣化する可能性があります。このような場合には、毀損、滅失した個所を修復するため予期せぬ費用が発生するばかりでなく、一定期間建物が稼働不能となることを余儀なくされ、賃料収入が減少して、関連する費用等が増加することで投資法人が損害を受ける可能性があります。また、完全な修復が行われたか否かにかかわらず、評価額が下落するおそれもあります。

 

投資法人は、火災・水害等による損害を補償する火災保険、賠償責任保険等を一般的に付保します。このような複数の保険を組み合わせることによって、予期せざるリスクが顕在化した場合にも、保険による保険金をあてることで、原状回復を行うことが一定程度期待できます。ただし、個々の不動産に関する状況により保険契約が締結されない可能性、保険金の上限額を上回る損害が発生する可能性、保険でカバーされない災害や事故が発生する可能性、または保険会社による保険金の未払いや、支払いの遅れも否定できません。また、保険金が支払われた場合でも、行政上の規制その他の理由により、建物を事故発生前の状態に回復させることができない可能性もあります。

 

加えて、天災地変とりわけ広い地域に被害をもたらす大地震が起こった場合、投資法人の保有する不動産のうち複数の建物が同時に天災地変の影響を受ける可能性は否定できません。投資法人は取得する資産について地震保険を付保することを原則として予定していないため、地震によりこれらの資産に損害が生じた場合には保険によりこれをカバーすることはできません。また、将来、地震保険を付保したとしても対人的被害の賠償については、保険でカバーされないこともあります。

法規制の変化によって建物に補修などの費用が発生

(8)建築基準法等の規制に関するリスク

不動産のうち建物は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する基準等を定める建築基準法の規制に服します。その建築時点(正確には建築確認取得時点)においては、建築基準法上や関連法令上は適格であった建物でも、その後の建築基準法等の改正に基づく規制の変更により、変更後の規制のもとでは不適格になることがあります。たとえば、建築基準法は、耐震基準について昭和56年にいわゆる新耐震基準を採用し、それ以降に建築されるべき建物にはそれ以前とは異なる耐震基準が適用されています。

 

また、不動産は、様々な規制の下にあり、国の法令のほか、各地方公共団体の条例や行政規則等による規制があることもあります。たとえば、駐車場の付置義務、住宅の付置義務、福祉施設の付置義務等のほか、これらの義務に関連して、建物の新築・増築に際して地方公共団体等と協議する義務等を課されることがあります。また、道路指定により敷地面積・容積率が結果として減少することもあります。そして、これらの規制も、随時改正・変更されています。

 

こうした法規制の変化によりかつて法令に適合していながら後日適合しなくなった既存不適格の建物は、改築したり、建て替えたりしようとする際に、従前の建物と同等の建ぺい率・容積率・高度・設備等を維持できなくなり、追加の設備が必要とされたり、建て替え自体が事実上困難となる可能性があります。このような場合には、不動産の資産価値や譲渡価格が下がる可能性があります。

 

以上のほか、土地収用法や土地区画整理法のような私有地の収用・制限を定めた法律の改正等により、不動産の利用、用途、収用、再開発、区画整理等に規制が加えられたり、その保有、管理、処分その他の権利関係等に制限が加えられたりすることがあります。その結果、関連する費用等が増加し、または不動産の価値が減殺される可能性もあります。

センコー・アセットマネジメント株式会社 代表取締役

1961年生まれ。東京大学経済学部卒業。1984年株式会社日本長期信用銀行(現株式会社新生銀行)入行。国内外の金融機関及び物流会社に勤務後、2009年にセンコー株式会社へ入社し、特命担当課長としてカザフスタンでのプロジェクトに参画。2014年にセンコー・アセットマネジメント株式会社を立ち上げ、同社代表取締役に就任。センコー株式会社の私募REIT の組成と運用を手がける。

著者紹介

連載投資する前に知っておきたい「私募リート」のメリット・デメリット

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

世界一わかりやすい私募REITの教科書

初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

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