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笑わせるなら「相手を喜ばせること」が大前提
異業種の場合、例えば、営業職の人や接客業の人などは、「笑わせて相手との距離を縮めたい」と考える人もいるでしょう。その場合はネタが必要ですが、ネタを選んだり準備したりする際にも「相手を喜ばせる」ことが大前提です。
「どうやって笑わせようか」
そう考え始めると、笑いをとろうとするあまり、相手や他人のおかしなところを見つけ、それをネタにしてしまうことがあります。
例えば、いつも失敗してばかりの同僚をネタにしたり、まずくて評判の近所の料理店をネタにしたり、ハゲ、デブ、チビ、ブサイクなど、人の容姿を馬鹿にする悪口も、このタイプのネタに含まれます。お笑い芸人の世界では、これも笑わせるテクニックとして使われています。いわゆる毒舌やいじりと呼ばれる芸です。
しかし、笑いで人を引き寄せ、目標達成のヒントなどをその人たちから得たいのであれば、このタイプのネタは逆効果です。毒舌やいじりのような攻撃的な笑いは、誰かを傷つけます。目の前にいる相手は傷つかなかったとしても、その人の周りに背が低い人や太っている人がいれば、彼らは傷つくでしょうし、相手も良い気分にはなりません。
「面白い人だな」と思ってくれる人もいるかもしれませんが、「悪口が多い人」「人を馬鹿にする人」「デリカシーがない人」などと思われてしまうと、味方になってもらえません。目標達成のための笑わせるチカラは、相手を傷つけることなく、相手を喜ばせなければならないのです。
誰も傷つかない「自虐ネタ」が役立つ
そこで役に立つのが、自分をネタにする自虐ネタです。攻撃的な笑いは誰かを傷つけますが、その対極にある自虐ネタなら誰も傷つきません。相手を不快にさせたり相手に嫌われることもありません。
「自分が傷つくのでは」と思うかもしれませんが、自分が傷つくのは攻撃的な笑いをしてしまったときで、「悪口が多い人」や「人を馬鹿にする人」などと思われて、自分の評価に大きな傷がつきます。
私の歯科医院での例を挙げると、あるとき、息子の浪人が決まったという母親が治療に来ました。
「先生、うちの子ね、全然勉強しないんです。案の定、浪人です」
悲しそうな顔をして、そんな愚痴をこぼすわけです。そういう人を見ると、笑わせてあげたいと思います。こういうときこそ、自虐ネタです。
「お母さん、大丈夫です。僕は二浪ですが、こうして歯医者になることができたんですよ。しかも、在学中には留年もしています。一年留年で一留です。一留するくらいが一流なんですよ」
そう伝えると、母親はほっとした表情(もしかしたら呆れた表情かもしれませんが)を見せ、笑いました。
決して大爆笑をとるようなネタではありません。しかし、それで十分です。目標達成のために笑わせる目的は、「面白い人」と思われることではなく、誰も傷つけずに相手を笑わせ、その結果として相手が喜んだり、自分と相手の距離を縮めたりすることなのです。
失敗もコンプレックスも、相手を笑わせる「財産」
ちょっとした自虐ネタでも、相手は笑ってくれます。そう考えれば、ネタはたくさん見つかります。過去に失敗したことがない人はいませんし、誰だってコンプレックスの1つや2つはもっているものだからです。失敗やコンプレックスの話は、自分としてはあまり披露したくなく、面白いと思えないかもしれません。しかし、相手が笑ってくれて、その結果として目標達成が近づくなら、使わない手はないでしょう。失敗は財産であり、コンプレックスも財産なのです。
ところで、成功した経営者の自伝などを読んでいると、かっこいい話がたくさん出てきます。起死回生の事業がうまくいった、従業員をリストラすることなく経営難を乗り切った、利益はあとからついてくる、リスクを取らなければ成長はない、など…。もちろん、このような話から学べることはたくさんあります。夢や目標をもつ人は、成功者の美談に触れることで刺激を受けたり、奮起したりするものです。
ただ、順風満帆に生きてきた人はいません。誰もがどこかでつまずき、失敗したり失態をさらしています。優れた経営者も例外ではなく、失敗しているはずです。挑戦の数が成功する確率に結びつくとすれば、成功者ほどたくさん失敗しています。
相手を笑わせるという点から見ると、重要なのは失敗です。成功につながった光の部分ではなく、失敗、失態、後悔、恥といった陰の部分があるからこそ、人間味が伝わり、親近感が湧き、信頼感が生まれ、その結果として笑顔になってくれるわけです。
美談を聞いても笑えません。失敗談は笑えます。つまり、「谷あり、谷あり」の人生を歩み、たくさん壁にぶつかってきた人ほど、自分では意識していないかもしれませんが、上質な自虐ネタがたくさん詰まったネタ帳をもっているのです。
安積 中
あづみハッピー歯科医院院長
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