NZで物件を貸すときは借り手の「見かけ」も重視!?
ニュージーランドへ移住を希望する方、暮らすように過ごす長期滞在を希望する方は、まず賃貸物件に住み、実際の街の雰囲気、家の構造・デザインを体験してから購入物件を決める方が多いです。
今回は、賃貸物件の探し方と、契約の裏事情を貸す側・借りる側両方の視点で説明します。まずは貸す側の考えと、投資物件を購入する際の注意を見ていきましょう。
物件の購入後、賃貸管理会社へ家賃に対する8%の手数料を払えば、入居者探し・家賃の回収・トラブルの処理などを、全て委託することができます。投資する側は、毎月月末〆の月初支払いで銀行口座の明細を確認するだけですから、楽な話だと思われるかもしれません。
海外在住の家主は、物件の管理は必ず委託する必要があります。そこで管理マネージャーは、可能な限り良い入居者を見つけ、安全に効率の良い賃貸運営ができるよう、入居者の選択には非常に気を使います。
物件を取り巻くトラブルは家主にとって当然マイナス要素となりますが、管理マネージャーにとっても同じことですので、よく吟味した上で入居者を選択します。
では、何を基準に良い入居者を見つけるのでしょうか?
①クレジットチェック
有料ですが、その人の過去の支払い状況を確認できます。未払いを繰り返す人ではないか、悪い経歴の有無をチェックします。
②入居者の経歴
以前の家主や管理マネージャーから、入居者の年収・家族構成・賃貸経歴を確認します。
③面談での印象
実際の面談で感じた印象によって判断します。
以上、3つのポイントをもとに入居者を選択していきます。複数の依頼者がいれば、まず第一にクレジットチェックで問題がないかどうかを確認し、年収、勤務先の状況などから判断をします。ちなみに、共稼ぎのダブルインカムは選択できる物件の幅が広いです。
実際に、賃貸物件検索の同行手伝いをした経験を紹介します。その方は学校の教師で、収入面、クレジットチェックでも何も問題はありませんでした。
しかし物件見学の際、その方は服装がジャージ姿で、着古しで少々みすぼらしい格好をしていました。賃貸管理マネージャーも、あなたは購入できないよ・・・といわんばかりの対応をします。
それでも貸してもらえないと困りますので、何とか複数の物件を案内して、管理マネージャーと交渉しました。しかし残念ながら、複数の依頼者が出て、どの物件も選択してもらえないという結果に終わりました。
なぜこのような結果になったのか。筆者は、言葉が通じず、身なりも整っていなかったことで、家主側の担当管理マネージャーに疑問を持たれたからではないかと考えています。
これは借りる側の注意点でもあるのですが、管理マネージャーは、身なりをチェックすることで、家を清潔に保てる人かどうかを見極めます。厳しいと思うかもしれませんが、管理マネージャーに任せれば入居者選びは安心だとも言えます。
ちなみに、「家を売りたい」という理由から入居者に出ていってもらいたい場合は、42日前に退去の申し出をする必要があります。その他の理由では90日前です。借りる方は、3週間前に申し出るという規則がありますので、クレジットチェックなどの問題が無かったとしても、課題が生じてしまう場合が絶対的にあります。
そのため、万が一の時は90日前に申し出をして出ていってもらうという行動が取れますので、まずは住んでもらう方向へ進めることをお薦めしています。
「高い家賃を払う」入居希望者が有利とは限らない
次に、借りる方の注意ポイントを見ていきましょう。ニュージーランドでの賃貸物件探しは、一つの不動産屋賃貸会社を訪問しても、希望の物件はなかなか見つかりません。なぜなら、ニュージーランドには一戸一戸その物件の担当者が個々にいるためです。
それぞれの担当マネージャーと交渉しなければならないため、とても時間がかかります。希望する住居の最寄不動産賃貸会社に訪ねても、リストがないため全く異なる地域の会社に訪ねなければならないという現象が出てきます。
では、最近実際にあった事例をご紹介しましょう。
ある有名企業の駐在員が、オークランド配属になったため新居を探していたところ、やっとの思いで気に入った家を見つけました。
当初この方は、以下の内容でオファーしていました。
●家賃・・・家主希望価格の了承
●契約期間・・・半年固定契約
●入居開始日・・・1ヶ月後
その後2組と競争することになったため、家賃を更に50ドル追加しました。契約期間は1年固定で、入居開始日は同じく1ヶ月後。家賃を更に50ドル追加して払うという提案はとても強力なため、必ず家主にも選択してもらえるだろうと思い、私は意気揚々と管理マネージャーにその旨を伝えました。
ところが、管理マネージャーは頭を抱えています・・・というのも、「50ドルも追加して払うくらい別の家も貸してもらえない状況の人なのか?」という疑いを持たれてしまったからです。
こちらは良かれと思って家賃を50ドルを追加し、この家に住みたいのだという意思表示をしたのですが、怪しい人物に思われてしまったのです。
結局入居は決まったものの、家賃はそのまま、ただし入居日を2週間後に早く契約してほしいという要求がされました。こちらとしては、貸してくれる上に家賃も追加しなくて良いということだったので、2週間後の入居契約を喜んで承諾しましたが、ニュージーランドでは、「高く払えばいいわけではない」ということがよく分かった事例でした。
物件のメンテナンスで「高級素材」を使わない理由
最後に、賃貸物件のメンテナンスについて説明しましょう。
ニュージーランドの住宅地には、必ず花や、レモン、オレンジ等の木々が庭に配置されています。高く伸び咲き乱れる様は綺麗と言えるのですが、葉っぱが落ちていく時期は掃除がとても大変です。2mくらいだった木がいつの間にか3m、5mと伸びお隣の家に倒れる・・・そんな光景をよく見かけます。
そんな中、賃貸マネージャーは木の伐採作業の見積を取り、荒れている庭先の手入れも業者に依頼し、賃貸物件を綺麗に保ちます。入居者によっては庭いじりが好きな方もいますが、単なる芝刈については、家賃に含めて業者へ依頼をするという設定が多いです。
日本では、入居者が退居したあとは家主が壁紙の張り替え、畳の入れ替えなどを行いますが、ニュージーランドでは、入居者が清掃する必要があります。入居者が清掃を行わないとなると、家主側は清掃代を請求することもできるのです。
一方、清掃しただけでは次の借り手が見つからないということであれば、ペンキ塗り替えや、カーペット交換などのメンテナンス・・・つまり、更なる投資資金を用意する必要があります。だいたい5年に1回程度、大型メンテナンスが必要と考えてください。
綺麗に使ってくれる入居者とめぐり会えれば、5年どころか、10年メンテナンスいらずになることもあるのですが、そこはクレジットチェックだけでは見抜けないので、難しいところです。
改装予算を家主に設定してもらう際、私たち仲介業者は、改装業者と相談をし見積価格を設定するのですが、最大家賃価格に見合った形での改装工事をするよう心がけています。
例えば、カーペット、キッチンや、バスルームの素材。これが一番価格を左右するポイントになります。
カーペットもウール100%のふわふわ感のある高級素材ですが、そんな素材を使っていては投資効率が悪くなってしまうので、合成樹脂配合のカーペットを使用し、とにかくきれいな内装に整えます。室内でも靴のまま入って生活する習慣の国ですので、ビニール製でも充分なのです。
キッチンのベンチトップも、大理石のような石タイプは高額となってしまうため、ベニヤ板を使った枠を用いるなど、工夫しながら投資賃貸運営ができます。
これらの最低限の素材で改装した家でも、汚い古い家より借り手候補は殺到しますし、費用をかけた分、資金回収ができるようになります。
異国での投資には不安と期待が入り混じりますが、ニュージーランドの賃貸運営は、至ってシンプルと言えます。
家賃を払わない入居者がいれば注意し、改善の余地がない場合は出ていってもらう対応ができますし、その他の理由なら、90日後には出ていってもらえる仕組みがあります。とはいえ、そういうことがないよう、入居者選びは慎重に行っています。