(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年11月18日に公開したレポートを転載したものです。

3―パワーカップル世帯の動向…コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労

1.共働き夫婦の年収分布…高収入の妻ほど高収入の夫、ただし扶養控除枠を意識する妻も

 

次に、パワーカップル世帯を含む共働き世帯の状況を確認する。

 

総務省「令和2年労働力調査」によると、夫婦共に就業者の世帯(以下、共働き世帯)は1,621万世帯であり、総世帯の約3割を占める。

 

この共働き世帯について、妻の年収階級別に夫の年収階級の分布を見ると、妻の年収が高いほど夫も高年収の割合が高まる傾向がある[図表5]。年収1,000万円以上の妻の80.0%が夫も年収1,000万円以上であり、以前より上昇している(2016年で75.0%、+5.0%pt)。

 

[図表5]妻の年収階級別に見た夫の年収階級分布(2020年)
[図表5]妻の年収階級別に見た夫の年収階級分布(2020年)

 

一方で、妻の年収が200万円未満を除くと、妻の年収が低いほど夫も比較的低年収の割合が高い傾向がある。つまり、高年収同士、あるいは低年収同士が夫婦であることで、夫婦(世帯)間の経済格差の存在が窺える。
夫婦世帯間の経済格差については、橘木俊詔・迫田さやか著「夫婦格差社会ー二極化する結婚のかたち」(中公新書、2013年)で指摘されている。

 

妻の年収200万円未満(収入無しを除く)では、逆に夫の年収は低年収の割合が低下し、年収500万円以上の割合が高まる。夫の年収500万円以上の割合は、妻の年収200~300万円未満では35.4%だが、妻の年収50万円未満では40.0%、50~100万円未満では46.4%、100~150万円未満では41.6%と4割を超える(図表5はこれらを合算した値)。

 

この背景には夫が一定程度の年収を得ているため、自身の収入を増やすよりも夫の扶養控除枠を意識して働く妻が増えることなどがあげられる。

 

2.パワーカップル世帯数の推移…コロナ禍でも引き続き増加、2020年で34万世帯、共働き世帯の2.1%

 

夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯に注目すると、2020年では34万世帯で総世帯の0.62%、共働き世帯の2.1%を占める[図表6]。
ここでの総世帯は先の厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」による5,179万世帯ではなく、総務省「2020年労働力調査」における二人以上世帯(3,544万世帯)と単身世帯(1,980万世帯)を合わせた5,524万世帯を用いている。

 

[図表6]夫妻の年収階級別に見た共働き世帯数(2020年)
[図表6]夫妻の年収階級別に見た共働き世帯数(2020年)

 

なお、冒頭で述べた通り、パワーカップルの定義は様々である。参考までに、例えば夫婦の合計年収が2千万円前後・以上の世帯について見ると14~29万世帯で総世帯の0.25~0.52%、共働き世帯の0.86~1.8%を占める。
図表5・6にて、妻の年収1,500万円以上で夫の年収500万円以上など合計が2,000万円以上に加えて、妻の年収1,000~1,500万円未満で夫の年収500~1,000万円及びその逆のパターンを加えたもの。

 

先に見た通り、年間所得2千万円以上の世帯は全体の1.3%であるため、このうち共働き世帯は3割前後を占めると見られる。また、夫婦の合計年収1500万円前後・以上まで広げると、46~156万世帯で総世帯の0.83~2.8%、共働き世帯の2.8~9.6%を占める。

 

視点を夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯に戻すと、パワーカップル世帯数は近年、増加傾向にある[図表7]。なお、2019年から2020年にかけての大幅な伸びは2021年以降の変化を考慮して判断すべきと考える。

 

[図表7]世帯類型別に見たパワーカップル(夫婦共に年収700万円以上)の世帯数
[図表7]世帯類型別に見たパワーカップル(夫婦共に年収700万円以上)の世帯数

 

なぜならば、同調査の就業者夫婦の年収階級別世帯数の公表値は1万世帯単位であり、現在のところ、単位に対してパワーカップル世帯数が少ないためだ。いずれにせよ、新型コロナ禍の2020年においても増加傾向が続いていることは注目に値するだろう。

 

また、パワーカップル世帯の内訳を見ると、引き続き「夫婦と子」から成る核家族世帯が最も多く、2020年で約6割を占める。次いで「夫婦のみ」世帯で約3割を占める。

 

3.夫の収入別に見た妻の就労状況…夫の年収が1500万円以上でも妻の約6割は就労

 

ところで、2017年の分析では、依然として、夫の収入が高いほど妻の就業率が下がるという「ダグラス・有沢の法則」が成立していた。

 

2020年のデータで改めて見ると、やはり夫の年収が400万円以上では夫の年収が高いほど妻の労働力率は低下し、依然として「ダグラス・有沢の法則」は成立している[図表8]。

 

[図表8]夫の年収階級別に見た妻の労働力率
[図表8]夫の年収階級別に見た妻の労働力率

 

一方で夫の年収によらず妻の労働力率は全体的に上昇傾向にあり、夫が高収入の世帯でも多くの妻が働くようになっている。例えば、夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、妻の労働力率は48.8%から61.5%(+12.7%pt)へ、世帯数は20万世帯から32万世帯(+12万世帯)へと増えている。

 

また、夫が高年収の世帯ではフルタイムで働く妻(週35時間以上就業の雇用者)もやや増えている。夫の年収が1500万円以上の世帯では、2014年から2020年にかけて、妻の労働力率は14.6%から17.3%(+2.7%pt)へ、世帯数は6万世帯から9万世帯(+3万世帯)へと増えている。

 

なお、夫の年収が700万円以上の世帯に広げて見ると、妻の労働力率は17.4%から21.2%(+4.8%pt)へ、世帯数は78万世帯から114万世帯(+36万世帯)へと増えており、このうち約3割がパワーカップルである。

 

次ページおわりに…遠回りに見えるが就労環境の整備こそ有効な消費喚起策

本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

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