「『今日が一番若い』のは、卵巣も同じこと」と語る山下真理子氏

いつまで続くのか分からず、「出口の見えないトンネルのなかにいるよう」ともいわれる不妊治療。女医の山下真理子氏も、そんな不妊治療で子供を授かったひとりだという。どのような問題に直面し、どう向き合ってきたのか、医師の立場から語ってもらう本連載。女子校で特別講義をしたときに出会った「子どもはいらない、結婚もしなくていい」という女生徒たちに、あえて伝えたことを原稿にしたためてもらった。

時間は戻ってこない

10代の私は、間違った無理なダイエットを繰り返していた。先のことなんてどうでも良くて、とりあえず痩せさえすればいいと思っていた。生理不順や生理痛など、ホルモンバランスが乱れている兆候はたくさんあったのに、特に問題視もしなかった。

 

20代になって、医学知識を身につけて、美容医療にも関わるようになってからはホルモンのこと、身体の中から健康でいるべきこと、そのために必要なことなど、様々なことを学んでは実践してきた。

 

けれども、時間は戻ってはこない。もちろん、10代の頃から正しい知識を身につけていても、結果は同じだったかもしれない(AMH低値は環境要因以外に、遺伝要因や体質なども関係していると言われている)。

 

それでも、「あの時ああしていたら」と考えずにはいられない。

 

私がそうだったように、15歳の女子高生たちが、「子どもを産むこと」や命について、そして、自分自身の体について、しっかり考えていなくて当然でもある。

 

だからこそ、10年後20年後に後悔しないように。そう思って、テーマを選ばせていただいた。

死ぬまで自分の身体と付き合っていく

不妊治療は自然の摂理に反する、と言う人もいるし、「そこまでして産む必要はない」という人もいる。「子供が一人いるならそれで十分なはずだ」という人もいる。

 

妊娠出産は女性にしかできない。だから素晴らしい、とか、だから子供を産むべき、という意味では全くないが、今欲しいと思わなくても、いつか「産みたい」と思うかもしれない。

 

子どもを産む産まないにかかわらず、いずれにしても、死ぬまで自分の身体と付き合っていくわけである。乱れた生活習慣は、ホルモンバランスの乱れに繋がるし、ホルモンバランスの乱れは、生理痛やPMSなどのトラブルだけではなく、婦人科系疾患の一因になる可能性もある。自分の体を蔑ろにすることで起こる腸内環境の乱れは、「脳腸相関」にも言われる通り、メンタルにも関係する。逆に、過度のストレスは、腹痛や肌トラブル、睡眠障害など、様々なトラブルの原因になる。

 

「命」について考えることは、すなわち、自分自身に向き合うこと。自分の体の「声」に耳を傾けて、健康のあり方を考えることは、「命」を大切にすることにつながる。不妊治療を受けている人は年々増加していると言われるし、医療機関を受診していない、タイミングなどの「妊活」をしている男女は百万人以上とも言われる。新たに生まれる赤ちゃんの16人に1人は不妊治療によって生まれた子供という統計もある。

 

ただ物理的に「受精」や「採卵」を目指すことだけが妊活ではない。そもそもの自分の身体と向き合って、体内環境を変えていくこと、そして健康への努力は、早いに越したことはない。
 

 

山下 真理子

 

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