「開発規制」で需要に供給が追いつかない状況!?
東京の単身者人口は増えており、ワンルームマンションの需要も増加しています。しかし反対に、ワンルームマンションの供給は減少傾向にあります。
市場原理では、需要が増えているものに対しては供給も増えるのが普通です。しかし近年、ワンルームマンションの開発を規制する条例や指導要綱が東京で次々と制定されており、ワンルームマンションの需要に供給が追いついていないのです。
規制が強化されている理由のひとつが、入居者のマナー。残念なことですが、ほんの一部の入居者がゴミ捨てのルールを守らない、騒音を出す、自転車を駐輪スペース以外の場所に停めるなど、ワンルームマンションの入居者のマナーの悪さが問題視されています。
また、ワンルームマンションの入居者は20代、30代が多いため年少者や高齢者が少なくなり、地域の人口バランスが崩れるといった問題も指摘されています。こういった理由を背景として近年、ワンルームマンションの開発を規制する条例や指導要綱を改定する動きが東京各区で目立ってきています。
豊島区には「ワンルームマンション税」も
規制の内容は区によって異なりますが、ワンルームマンションを新築・増改築する場合、すべての住戸の面積を定められた面積以上にすること、一定割合の戸数・専有面積をファミリータイプにすること、管理人や管理システムの体制を強化することなどが柱になっています。
また、一定割合の戸数に年齢65歳以上の高齢者を居住させることを奨励している区もあります。
たとえば、港区は2009年4月から「単身者向け共同住宅の建築及び管理に関する条例」を施行しました。この条例は、1住戸の専有面積が37㎡未満の住戸が7戸以上ある共同住宅を対象としたもの(総戸数の4分の3以上を住戸専有面積50㎡以上としたものは除く)。
[図表1]東京のワンルーム開発機異性(抜粋)
このような共同住宅を新築したり、増改築や用途変更で対象となる共同住宅となった場合、商業地域以外ではすべての部屋の住戸専有面積を25㎡以上としなければなりません。
品川区では、2009年5月に「ワンルーム形式等集合建築物に関する指導要綱」を制定しました。こちらも、最低必要な住戸専有面積の広さやファミリータイプの戸数の確保を定めています。
また、豊島区では1住戸の専有面積を20㎡以上とするよう定めるとともに、「狭小住戸集合住宅税」の制度を設けています。
これはワンルームマンション税ともいわれるもので、新築や増改築で専有面積が30㎡未満の住戸が9戸以上ある集合住宅をつくる場合には、1戸につき50万円の税を課すことになっています。専有面積30㎡未満の住戸が30戸あるワンルームマンションを建てるとしたら、50万円×30戸分のワンルームマンション税を事業主が払わなければならないのです。
他の区でも同じような条例・指導要綱が定められており、現在、東京23区のすべての区でワンルームマンションの開発に対してなんらかの規制が設けられています。
将来的には限られたマンションに入居者が集中する!?
全国的に見ても2008年以降、投資用マンションの供給戸数は減少しています。このような状況の中、規制が強化されている東京では、今後も、30㎡未満の部屋を中心としたワンルームマンションの供給が減ることは確実です。
[図表2]投資用マンション供給戸数の年次別推移(1995〜2009年)
一方、東京の単身者人口は今後も増えていくと予測されています。そうすると、どうなるか。限られたワンルームマンションを、入居希望の単身者が奪い合うような格好になります。投資という観点から見れば、規制が強化されているために、空室リスクが少なくなっているのです。
前述したように港区や品川区などでも他の区と同じように規制を強めていますので、こうした人気エリアになればなるほど、入居者が集中する、空室リスクが低くなる傾向が今後も高まるはずです。