WTIは年初来76%上昇
■原油先物のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)相場は25日、一時7年ぶりの高値を付け、1バレル83.76ドルで取引を終えました。年初来の上昇率は76%となりました。
■原油高の背景には需給ひっ迫懸念が強まっていることがあります。新型コロナウイルス禍からの世界的な経済回復で需要が増える一方、現時点で石油輸出国機構(OPEC)加盟国などでつくるOPECプラスは産出量拡大に消極的な姿勢を示しています。また、国際エネルギー機関(IEA)によると、経済協力開発機構(OECD)加盟国の8月時点の石油在庫は過去5年平均を大幅に下回っています。
石炭、天然ガスの高騰が後押し
■さらに、今年の春以降、石炭や天然ガスの価格が高騰したため、代替としての原油の需要が増えるとの観測が原油価格を押し上げています。20年以降の価格推移をみると、天然ガスや石炭価格の上昇率は原油価格を大きく上回っています。
■こうしたエネルギー価格の高騰は、最近の脱炭素の動きの加速も背景となっている可能性があります。世界的な再生エネルギーへのシフトから、供給サイドは化石燃料の新規開発を抑制しています。
エネルギー価格は当面高止まりする可能性
■脱炭素へのシフトは各国の政策によるため、供給不足がなかなか解消されず、エネルギー価格が当面高止まりする可能性があります。エネルギー価格の上昇などからインフレが想定以上に長引くと、コロナ禍からの経済活動正常化に水を差す恐れがあり、今後の動向が注目されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格が7年ぶりの高値に上昇』を参照)。
(2021年10月27日)
関連マーケットレポート
2021年8月24日 原油価格はデルタ型拡大、金融緩和縮小観測から下落
2021年8月19日 『IPCC』の地球温暖化のシナリオ、脱炭素は必達