悪質なクレーマーはちょっとした手違いにつけ込む
クレーマーの言い分は、時間の経過とともに変遷されることも多く、初期段階の言い分をしっかりと記録しておくといいでしょう。
対応の窓口は、一本化するべきです。複数のスタッフが別々に対応してしまうと、回答や対応に矛盾が生じてしまうおそれがあり、無用な紛争の火種となりかねません。悪質なクレーマーは、ちょっとした手違いにつけ込んできます。
患者の言い分を鵜呑みにするのではなく、関係するスタッフからの聞き取りなど、事実関係を正確に調査することが必要です。調査の結果は、のちの裁判手続きに証拠として使用されることもあるので、必ず書面で残すようにして下さい。
医療機関は説明義務を負っており、調査の結果については、患者や遺族に分かりやすく説明することが求められます。不確実な報告は控えるべきですが、報告までのスピードは、誠意の表れとして評価されます。
患者に対する報告が遅れてしまうと誠意がないと受け取られかねません。初回の報告では、客観的に明らかな事実を伝えるだけでも良いので、できるだけ速やかにおこなうように心掛けて下さい。その後、新たな事実が判明すれば、その都度速やかに報告すれば十分です。
医療機関は悪質なクレーマーの言いなりになりやすい
医療機関にミスが認められる場合には、患者に対し、どのようなミスがあったのか丁寧に説明する必要があります。
損害の内容や程度によっては、多額の損賠賠償責任を負うことがあります。医師賠償責任保険に入っている場合には、事前に保険会社の担当者とも相談しておき、保険金がおりるのかどうか確認もしておくといいでしょう。
明らかに医療機関に責任がある場合には、誠実に謝罪することが必要です。医療機関が誠意のある対応をすることで、患者や遺族の不信感や怒りがおさまり、医療機関に責任追及をおこなわない場合も往々にしてあります。
逆に、医療機関に責任がない場合や責任の有無が明らかでない場合には、不用意に非を認める形での謝罪は厳に慎むべきです。裁判になった場合に、裁判官に対し非を認め謝罪した事実をもって、医療機関に後ろめたい事実があるとの心証を与えてしまいかねないからです。
調査の結果、医療機関に全く責任がないと判断した場合には、患者に対してその旨を明確に説明する必要があります。特に、悪質なクレーマーには、毅然とした対応をすることが重要です。
この時、悪質なクレーマーは、執拗にクレームをつけ、いくら丁寧な説明をしても聞く耳を持たないことが往々にしてあります。
必ずしも医療機関のスタッフは、紛争解決に慣れている訳ではなく、執拗なクレーマーから逃れたくなります。その結果、クレーマーの言いなりになっている事例をよく見かけます。
筆者の経験では、日頃の診療で患者に寄り添う医療を心掛けているためか、医療機関のほうが一般企業よりも、悪質なクレーマーの言いなりになってしまうことが多いと感じています。