クレーマーがモンスター化する事例
医療機関の対応が原因で、クレーマーをモンスターに育てている事例も散見します。
例えば、外来窓口で患者がスタッフに対し、「一体いつまで待たせるんだ!」などと凄い剣幕で怒鳴りつけてきたとします。このような場合に、慌てたスタッフがその患者を特別扱いし、優先的に診療室に案内したならば、確かにその場では一旦騒動が収まるかもしれません。
では、もしこの患者が再び外来を受診し、同じように待たされた場合、次は順番が来るまで待ってくれるのでしょうか。おそらく、誤った成功体験をさせてしまったが故に、次も同じように特別扱いを求めてくるでしょう。毎回この患者だけを特別扱いするわけにはいかないと断ろうものなら、ますます攻撃性が増すかもしれません。
初期段階から毅然とした対応をとることが、モンスター化の防止につながることを肝に銘じなければなりません。
示談金目的でクレームをつけてくる可能性も
医療機関側の事情を熟知しているのか、絶妙な示談を求めて来るケースもあります。
例えば、医療機関に全く責任がないにもかかわらず、治療の結果が気に入らないと、毎日のように訪ねて来て、「医療ミスだ」「誠意を見せろ」などと大声でスタッフに怒鳴りつけてくる患者がいたとします。
医療機関側が幾ら丁寧に説明しても納得してくれません。毎日のように人格まで否定されるため、対応するスタッフも精神的に参ってしまいました。ここで患者が、「示談金として10万円を支払え」と言ってきたらどうでしょうか?
紛争解決に慣れていない医療機関では、わずか10万円を支払えばこの煩わしい悪質なクレーマーから解放されるとの思考に陥ってしまうことがあるようです。このような場合に、実際に支払ってしまったという事例をよく見かけます。
しかしながら、このような処理をしたとしても、根本的な問題解決に繋がりません。一旦、クレーマーの言いなりとなってしまうと、クレーマーの要求はますますエスカレートしていきます。クレーマーの言いなりにしてくれるとの風評が広がり、他のクレーマーからも標的にされ、ますます煩わしい紛争が増えてしまうかもしれません。初めから示談金目的でクレームをつけてきた可能性すらあるのです。
医療機関に非がない場合には、甘い誘いに乗らず、毅然とした対応をとることが極めて重要です。
早めに弁護士に相談できる体制を整えておくこと
以上のとおり、全てのクレーマーが悪質という訳ではなく、悪質なクレーマーとそれ以外を見極めることが重要です。
明らかに医療機関に責任がある場合には、医療機関が誠意のある対応をして、信頼関係を維持することが、必要以上の紛争防止になります。
一方、悪質なクレーマーには毅然とした対応が必要です。悪質なクレーマーに対し、紛争解決に慣れていない医療従事者だけで対峙して、かえって問題をこじらせてしまった事例をよく見かけます。一旦こじれてしまうと、解決が遠のいてしまうので、早めに弁護士に相談できる体制を整えておくことをお勧めします。
悪質なクレーマーに無駄なエネルギーを奪われることなく、本来の医療提供に専念して頂けることを願っております。