再就職が厳しいなか「介護離職する中高年」の悲しいどん詰まり

相沢 光一
再就職が厳しいなか「介護離職する中高年」の悲しいどん詰まり
(※画像はイメージです/PIXTA)

介護と仕事の両立は難しいものです。簡単に結論を出せる問題ではありません。 ※本連載は相沢光一著『介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ』(河出書房新社)より一部を抜粋、再編集したものです。登場するケアマネの方々、サービス事業者の方々のお名前は、すべて仮名です。

なぜ介護離職を全力で止めるのか

知識、情報収集能力にもそれが表れます。

 

介護のスキルは、方法論の増加やサポート機器の開発などによって日々進化しています。現場の状況も時代の流れに応じて変化している。ケアマネもそれに対応して知識を更新していかなければなりません。新たな情報を積極的に吸収して、ケアに反映させることが求められるわけです。ところが、その意欲に欠けるケアマネがいるというのです。

 

「たとえば介護離職。いまは中高年の雇用が厳しくなっていますよね。離職した介護者は、介護が終わったあと、再就職しようと思っても職が見つからずいきづまってしまう。私が担当した利用者さんのご家族にも、そんな方が何人かいて、つらい状況にあることを知っています。

 

だから、介護離職を考えている利用者さんがいたら全力で止めますよ。

 

たしかに介護と仕事の両立は難しい。簡単に結論を出せる問題ではありません。でも、なかにはかなり厳しい状況でも両立させている方もいる。

 

私はそういう事例を聞いたら、どのように負担を軽くしているのか情報を集めます。仕事はどうしているのか、介護ではどんな負担軽減策をとっているのか、デイサービス、ショートステイの利用状況も含めて参考にするんです。

 

そして利用者さんには『こうして乗り切っている人もいるんです。私も負担軽減のために知恵を絞しぼり、できるだけのことをしますから離職は踏みとどまってください』と説得します。

 

でも、ベテランのケアマネには離職を止めない人がいるんです。なかには『子が職を辞めて親の介護をするなんて立派ね』なんていう人もいる。介護が終われば自分は関係がなくなるから、そんなことがいえるのでしょう」

 

新たな知識や情報の収集に意欲的なのは、利用者・介護者に対する思いやりの表れだともいえます。親切だと評判を得ている、あるケアマネは、忙しい仕事の合間に介護に関係する異業種の人たち、とくに医療関係者、相続にくわしい法曹関係者、葬儀関係者などとの人脈づくりとネットワーク化に励んでいます。介護者から、関連する相談を受けることがあるからです。

 

ここまでくると、もはやケアマネの領域を超えていますが、利用者・介護者のことを考えたら、そうしたアドバイスや人の紹介をできるようにしておきたいという思いがあるのです。

 

ダメなケアマネにありがちな欠点を見てくると、ケアマネに求められる要素は「人間性(人の好さ)」と事務処理、情報収集などの「能力」の2点だということが見えてきます。

 

それを分類すると「人が好くて有能」「人は好いが能力に欠ける」「人間性に問題はあるが有能」「人の好さにも能力にも欠ける」の4つのタイプに分けられます。

 

いうまでもなく、「人が好くて有能」なケアマネに当たれば何の問題もありません。もちろん関係は相性の良し悪しに左右されますから、多少の感情のいき違いはあるでしょうが、このタイプならケアマネがフォローし、満足のいくサービスが受けられるはずです。

 

「人は好いが能力に欠ける」「人間性に問題はあるが有能」の2タイプもうまくやっていくことはできます。介護の鍵を握る人間関係。利用者・介護者サイドのケアマネに対する姿勢や対応、つまりつき合い方しだいで欠点を消すこともできるのです。

 

しかし、「人の好さにも能力にも欠ける」ケアマネに当たってしまったら、運が悪いとしかいいようがありません。この場合も多くの利用者・介護者は、我慢をしてケアを任せていると思いますが、対処の方法はあるのです。

 

相沢 光一
フリーライター

 

 

介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ

介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ

相沢 光一

河出書房新社

有能な人が担当になればラッキー。ところが、そうでない人だと…。介護サービスを受ける際の中心的な存在であるケアマネージャー。その良し悪しはどこで判断できるのか、「もっといい人を」と思ったら、どう対処すべきか。著者…

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