ケアマネのモニタリングは何をするのか
なお、ケアマネのチームづくりには介護業界の事情がからむケースもあります。ケアマネが所属する包括や事業所は民間の社会福祉法人が運営するケースが少なくありません。その社会福祉法人は訪問介護事業所やデイサービスなど複数の事業を運営しているケースがあります。
つまり、グループで事業展開しているわけです。そして、その一員であるケアマネには、グループ内の事業所に仕事を頼もうという意識が生まれるのです。もちろん、その社会福祉法人が利用者第一の良心的な経営をしており、傘下の事業所のサービスの質も高く、利用者が満足できるレベルなら何の問題もありません。しかし、営利追求の傾向が強く、サービスの質も高くないところもあるというのです。
といって、グループ運営をしている社会福祉法人所属のケアマネのすべてが、グループ内のサービス事業者を選択しているわけではありません。なかにはみずからがキープしているサービス事業者とグループの事業者を公正かつ客観的にジャッジし、良いほうを選ぶケアマネもいるそうです。法人の上層部からは問題視されますが、意に介さず利用者により良いサービスを提供することを優先する。そんな気骨のあるケアマネもいるのです。
■頼れるケアマネは方々にアンテナを張っている
チームづくりの手腕は問題解決能力にも結びつきます。
ケアマネの重要な仕事のひとつにモニタリングがあります。ひと月に1回以上、利用者宅を訪問し、利用者の心身の状態の変化や、行なわれているサービスの成果などをチェックするのです。ケアマネ自身が利用者の状態を見ることはもちろん、利用者本人や介護者に話を聞き、課題が見つかれば把握し、解決する方法を考える。その情報を収集する仕事です。
提供しているサービスが利用者の改善につながっているか、つづける必要性があるのか、そして、チームを構成するサービス事業者が利用者が満足するレベルの仕事をしているか、といったことをチェックする。モニタリングはケアプランやサービス内容を検証し、問題があれば見直しをする、つまりチーム再編を考える機会といえます。スポーツチームの監督が戦況に応じて選手交代するのと似ているといえるでしょう。
モニタリングの内容は「モニタリングシート」に記録されます。書式はさまざまですが、なかにはサービスの評価欄に満足度を記入するものもあります。ケアプランやサービス事業者の通信簿ともいえるでしょう。
ただし、利用者や介護者が記入するわけではなく、ケアマネ自身が聞き取った評価を書く方式をとっています。通信簿の採点を自分でしているようなものです。少数ですが、このモニタリングシートを利用者・介護者の目の前に置いて記入するケアマネもいます。また、目の前では記入しなくても、聞き取った話をそのままシートに書きこむ人もいるそうなのです。
「このようなケアマネが大多数だと思います。しかし、なかには利用者さんから聞いた評価を自分に都合よく変えて記入するケアマネもいるんです。サービスに不満を感じているニュアンスの話を聞いても、『満足している』にチェックを入れちゃうとか……」
こんな姿勢では、利用者が抱える課題はスルーされてしまいます。問題解決に向かう意欲に欠けているとしかいえないケアマネもいるのです。ダメなケアマネの特徴は、利用者・介護者により良いサービスを提供する「意欲に欠ける」ということに集約されるかもしれません。