(※写真はイメージです/PIXTA)

医学部や東京大学の入試問題は面白い。知的好奇心がくすぐられ、腕に覚えのある受験生でも答えに窮する「風変わりな問題」も多い。連載の第3回は東京大学の英語の過去問題。内容は、ギブスビルという街から11マイル離れた場所で農場を経営する農夫と街からやって来た女性との会話で構成されています。推理を働かせて答える必要があります。皆さんもチャレンジしてみください。

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「子供は何人?」に農夫はどう答えたか

「医学部」「東大」入試が問う論理的思考力第3回は、前回に続き東京大学の英語の過去問をもとに、東京大学が受験生に問うている論理的思考力について考えてみたい。

 

まず、英文を見て頂こう。内容は、ギブスビルという街から11マイル離れた場所で農場を経営する農夫と街から来た女性との会話で構成されている。問われているのは、英語特有の表現の箇所であるが、指定された下線部の前後の英文の内容から、推理を働かせて答える必要があり、良く練られている。

 

そこで今回は、論理的思考力として推理力が問われていると考えられる設問のみ抜粋してご紹介する。本問に課された問の中で1番興味深いのは、タイトルに象徴的に掲げたように、下線部(B)の意味を問う問題である。子供は何人いるの?という女性の問いに農夫が「Two,and one on the way」と返答したことについて、説明せよという記述問題だ。

 

シンプルだが興趣が尽きない。実際の英文問題に目を通しつつ皆さんも一緒に考えて頂きたい。英文が苦手という方は、英文の下に、英文の概要を記したのでこちらを参考にして読み進めてほしい。

 

“I’m the only one in this valley that gets the paper in the mail,” said the farmer. "It's two days old, but it's still news. People around here don't know what's going on in Gibbsville, eleven miles away." "There's not much going on there," said the lady from the town. "Oh, I don't know. My wife only reads the ads, but I like to read about what's happening. There's always something new. I wish I could get away from the farm." 
"Sell it," she said. 
"Ho-ho. Sell it! Did you ever try to sell a farm? (A)You never get what you put into it. If you don't have a son that's ready to take over and run your farm, your widow is lucky to get a quarter of the value for a quick sale." The lady remained silent for a little while. Then she said, "How many children have you got?" 
(B)"Two, and one on the way." 
"What are you going to do with them?" 
"Well, the boy is three and a half. The girl is two. It's too soon to say, but I hope the boy finishes college and goes away. By that time I'll be about fifty, I guess. Maybe I could sell the farm and get work in town. (C)Twenty years from now, who can tell?" 
"Maybe the boy will want to be a farmer. " 
"If he listens to his mother, he will." 
"She likes the farm." "She likes it better than town. She cooks, bakes, sews, and does the milking. She says she could shoe a horse." 
"You ought to be proud of her.(D) She sounds a very remarkable person. "In some things." "In a lot of things, it seems to me."
"You don't have to take her side against me," the farmer said. "I appreciate her, and I'm good to her. (E)Get that straight. I'm good to her."

 

(英文で述べられている概要―下線部(B)の解釈は伏せてある)

 

ギブスビル市から11マイル離れた盆地(谷間)に、街から女性がやって来た。その地で農場を経営する農夫と、女性は会話を交わす。農夫はこの地域で新聞を取るのは自分だけだと豪語し、新聞からギブスビルで起こる出来事を入手していると語る。女性はギブスビルでは特段何も起きていないのではと語る。

 

農夫は、新聞で社会の出来ごとや変化を知るのが好きだが、農夫の妻は新聞広告しか読まないという。農夫は街へのあこがれからか、農場から離れたいと考えている。彼女にそう話すと、女性は何なら農場を売却すればいいと助言する。

 

農夫は農場経営の経験も無い風の女性のその言葉に、売るなんてとんでもない、そんなことをしたらこれまで農場につぎ込んだ金は回収できないと力説する。目安としては、後継者がおらず、即売却したところで、投資額の4分の1の価値が得られれば幸運だという。その応答に女性はしばし黙り込んだが、女性は子供の話に話題を切り替える。

 

子供は何人いるのかという問いに、農夫は 【下線部(B)】 と答えた。

 

女性は農夫に彼らの将来をどう考えているか、尋ねる。息子は3歳半で、娘は2歳。まだ何とも言えないし、息子に関しては大学卒業後にどこか外に出てほしいと考えている。20年後のことは誰にも分らないが、その頃、農夫はおよそ50歳で、農場を売り、街に働きに出ているかもしれない、と語る。息子の進路に関しては、母親の影響がありそうだ。母親は街よりも農場が好みで、料理、菓子作り、裁縫といった家事から、搾乳、馬に蹄鉄を履かせることさえ可能だ。

 

働き者の家内の話を聞いて、女性は農夫に彼女を誇りに思うべきであり、彼女は素晴らしい女性のように思えると述べる。日頃から、妻に感謝の気持ちを抱き、良き夫であると、自負する農夫は、そこまで奥方の肩を持つ必要は無い、と態度をやや硬化させる。最後に、これだけははっきりさせねばと、妻に対する良き夫ぶりを農夫は強調し、くぎを刺すのである。

 

次ページ読む力、要約力が問われている
わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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