近年の規制緩和の動向
以上のように、電動キックボードの使用については、ヘルメット着用、運転免許取得及び車道走行義務といった規制が存在し、これらの規制が電動キックボードの普及を妨げていると指摘されていました(※2)。
(※2)警察庁 2021年4月「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会 中間報告書」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/mobility/interim-houkoku.pdf
そこで、電動キックボードの使用について、在るべき交通ルールを検討するため、「新たな規制の特例措置」として、「新事業活動計画」の認定を受けた場合、当該計画に従って貸し渡された電動キックボードについては、新事業活動を実施する区域内での走行に関する規制が緩和されました(産業競争力強化法第6条第1項、第9条第1項)。
まず、2020年10月の規制緩和においては、一定の車体規格や最高速度時速20kmなどの条件を満たす場合、普通自転車専用通行帯を通行することが可能になりました(※3)。
(※3)令和2年9月30日公布内閣府・国土交通省令第3号 https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/furei/200925/honbun.pdf
令和2年9月30日公布国家公安委員会告示第43号 https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/kokuji/200930/kokuji.pdf
令和2年9月30日付け警察庁丁交企発第241号等「『立ち乗り電動スクーター』係る特例措置について(通達)」 https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kouki/020930.pdf
次に、2021年4月の規制緩和においては、「総排気量0.020ℓ、定格出力0.25kw超」の電動キックボードを「小型特殊自動車」と位置づけたうえで、一定の車体規格や最高速度時速15kmなどの条件を満たす場合には、以下のルールが適用されることになりました(※4)。
(※4)令和3年4月8日公布内閣府令第28号 https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/furei/20210408/naikakufurei20210408.pdf
令和3年4月8日内閣府・国土交通省令第1号 https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/furei/20210408/meirei20210408.pdf
令和3年4月8日公布国家公安委員会告示第14号 https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/kokuji/kokkakouan/kokuji20210408.pdf
令和3年4月8日付け警察庁丁交企発第132号等「電動キックボードに係る産業競争力強化法に基づく特例措置について(通達)」 https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kouki/kouki20210408.pdf
当該特例措置により、国内の複数の事業者が、「新事業活動計画」の認定を受けて、既に、渋谷区や大阪市などの一部地域において電動キックボードのシェアリングサービスを提供しています。また、新規に認定を受ける事業者も増えており、かかる動きを受けて、外資大手も日本に本格参入するとの報道もなされています。
今後の課題と新たなルールづくりの動き
以上のとおり、規制緩和の動きがみられる一方、昨今、電動キックボードでひき逃げ事故を起こした運転者が逮捕されたとの報道もあり、電動キックボードの利便性と、運転者や歩行者等の安全性とのバランスが取れた、最適なルールづくりに向けた議論が加速しています。
道交法を所管する警察庁は、「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」を設置し、有識者やメーカー等との議論を踏まえ、2021年4月、中間報告書を公表しました(※5)。当該報告書では、最高速度が時速15km程度の電動キックボードに関する今後のルールづくりについて、以下の意見が示されておりますので、今後、当該意見を前提に、電動キックボードに関するルールが策定されると考えられます。
(※5)警察庁 2021年4月「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会 中間報告書」(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/mobility/interim-houkoku.pdf)
まとめ
以上のような傾向を踏まえますと、今後、走行場所、ヘルメット着用義務、運転資格等の運転に関するルールについては、一定程度の規制緩和が見込まれる一方、安全性の観点から、車両規格に関するルールや、販売事業者及びシェアリング事業者に対する一定のルールが新たに設けられることが予想されます。
モビリティ分野は、これまでも新たなモビリティが登場するに伴い、様々な規制改革が行われてきた分野ではありますが、電動キックボードをはじめとする新技術を用いた新たなモビリティ市場が拡大するにつれ、今後更なる論点が議論されていくと考えられます。
TMI総合法律事務所
弁護士 永田 幸洋
弁護士 粟井 勇貴
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