(※写真はイメージです/PIXTA)

まだまだ元気だと思っていた夫が、突然の病で急逝。海外在住の子どもたちは残された母を心配し、全財産の相続を快諾しました。しかし、穏やかに暮らせると思っていた矢先、亡夫の長兄が、夫から相続した貸家にいいがかりつけ始め、支払いを強要します。どうやって解決したらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

義兄が突然「駐車場代を払え」といいはじめ…

夫から相続した貸家は、夫の親が複数所有していたうちの一軒で、夫の父親が亡くなった際、兄弟それぞれが相続しています。また、兄弟が相続した貸家は、同じ区画の隣接した場所に建っており、土地建物は各自の単独名義です。佐藤さんの夫は男4人兄弟の四男で、これまでも家のことはすべて、実家を継いでいる長兄に従ってきました。

 

佐藤さんの夫が相続した貸家と駐車場の隣地は長兄の所有です。いずれも義父の代に建てた平屋の2Kタイプで、フェンスなどの区切りはありません。築40年以上経過した築古物件ですが、どちらも入居者があり、安定した家賃収入がある状態です。しかし、今後は修繕費などが必要になると予想されます。

 

ある日、佐藤さんのところに亡き夫の長兄から電話がありました。佐藤さんが保有する貸家の入居者の車が、一部長兄の貸家の境界にはみ出て駐車されているため、駐車料金を支払えというのです。佐藤さんは、生前の夫からそんな話は聞いたことがなく、また、入居者も以前からずっと同じ人で、トラブルなどはありませんでした。

 

高圧的な長兄の態度に恐怖を覚えたという佐藤さんですが、さらに面倒な要求がありました。駐車料金を毎月振り込まれるのは煩わしいので、半年ごとにまとめて支払うようにというのです。佐藤さんは義兄に逆らえず、とりあえず請求された金額を振り込みました。しかし、これから先も延々とこの支払が発生するのかと思うと、不安になってきたというのです。

 

「確かに貸家から家賃は入りますけれど、そこまで大きな金額ではありません。それに40年ぐらい前の建物ですから、これからは修繕費もかかってくるでしょう? そのうえあの怖いお義兄さんに、半年ごとにまとめてお金を振り込んで、その都度連絡しなければならないなんて…」

 

せっかくの収益不動産が、佐藤さんの重荷になってしまっています。

義兄のストレスから逃れるため、売却を決定

筆者は負担のみならずストレスも大きい不動産を売却して、別の立地に買い替えることを提案しました。

 

亡き夫の生まれ故郷ですが、佐藤さんが住む場所から遠く、ストレスを抱えてまで無理に維持する必要はありません。

 

佐藤さんは売却という選択肢に、心の底からホッとしたようでした。

 

「本当に安心しました。これでやっと気持ちが休まります…」

 

今回のようなケースでは、売却時にしっかりと測量をして、隣地との境界を明確にすることがポイントになります。親族同士だと感情的なトラブルに発展しかねないため、専門家に依頼して協力してもらうようにしましょう。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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