外債は、国内株の分散投資の対象として適している
なお、極論として、わが国が破綻してインフレとなれば円の価値が目減りするので、海外の高利回りの債券投資、例えばトルコ・リラ等への投資(発行者は国際機関等で信用リスクが小さい債券に限る)を行うべき、という意見もあります。
しかし、海外の高利回りの債券に投資することの収益性は、長期的には為替相場の変動によって国内の債券投資と同じとなると考えられます。
企業年金連合会は、過去のデータに基づいてシミュレーション計算をし、外国債券の収益性を3%、国内債券の収益性を1.5%と考えています。また、債券投資のなかの海外債券の割合は20%以内としており、債券投資のために外債投資による為替リスクはあまりとらないということです。
実は、海外の債券の利回りが高い理由としてインフレ率が高いことに注意が必要となるのです。先述のトルコのインフレ率は、約19%(2021年8月)となっています。インフレ率に差がある場合、長期的にはその差を埋めるような為替変動が起こると言われます。この説を「購買力平価説」と呼びます。
ちなみに、米国の2021年8月のインフレ率は5.3%となっていますので、将来は日本の2021年8月のインフレ率マイナス0.4%との差を埋める、ドル安・円高が発生すると予想できます。トルコ・リラも同様ですが、こうして外債投資の表面的な高利回りは、長期的には大半が失われてしまい、国内債券投資と大きな差がなくなることが多いのです。
しかし、一般的に外債投資は意味がないかというとそういうことはありません。外債投資は為替相場の変動を受けるのですが、そのため国内株式投資と外債投資の価格変動の仕方は異なります。そこで例えば、図表のように国内株式投資の投資信託4と海外債券に投資をする投資信託6で組み合わせると、リスク、リターンともによい結果を得る可能性が高いと考えられ、国内株式投資の分散投資の対象資産として適しています。外債投資は単独ではなく、こうして国内株式投資との組み合わせで行いたいものです。
藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】