多数のアスリートを輩出したスイミングスクールの校長・スポーツ科学者の村井正太郎氏によると、本番で自身の能力を発揮する力「本番力」を磨くことで、子どもの将来の選択肢が増えるのだといいます。本記事では、「習いごと」が子どもにもたらすメリットについて見ていきます。

人気No.1習い事「水泳」と「頭の良さ」の因果関係

最近、「東大生の何割がこういう習い事をしていた」といった記事が人気になっているようです。多くの親は、子どもに少しでもいいことをしたいと考えています。進学先も、少しでもいいところに進んでもらいたいと考えるのはごく自然なことです。

 

「いいところ」という定義は言ってしまえば、偏差値の高い大学です。そのトップに君臨する東京大学の学生たちがそれをやっていたとなれば、「うちの子にも同じ習い事をさせよう」と考えるのは自然の流れかもしれません。

 

東大生に人気の習い事は水泳です。その結果を知って、「水泳って頭が良くなるんですか?」と聞かれることもあります。水泳教室を運営している私としては、悪い話ではないのですが、この結果だけで飛びつくのは「ちょっと待ってほしい」というのが正直な感想です。

 

というのも、水泳はすべての習い事のランキングでも、一位になることの多い習い事だからです。全体で一位なのですから、東大生に限ってランキングをつくっても一位になりやすいのは当然の話です。

 

では実際のところどうなのか。頭が良くなるのか、あまり関係がないのか。

 

スポーツ科学の観点からいえば、脳にいい影響があるだろう、という推測はできます。というのも、あらゆるスポーツのなかで、水泳ほど呼吸を意識するものはないからです。

 

水泳は水に潜ります。人間は水の中では呼吸ができないので、クロール、平泳ぎ、バタフライでは息継ぎをします。息継ぎをするには泳ぎとタイミングを合わせないといけません。初心者にとっては、大きな壁の一つです。息継ぎができなければ、息が続くところまでしか泳げません。息継ぎができれば、その先もずっと泳げる。この差はとても大きなものです。

 

呼吸をするときには、脳が「吸う」「吐く」と指示を出しています。このタイミングが体の動きと合わないと、プールの水を飲んでしまいます。

 

これがほかのスポーツと違うところです。ほかのスポーツでも呼吸を意識する瞬間はあると思いますが、水泳は体の動きとピッタリ合わせないと、たいへん苦しい思いをしてしまうのです。

 

そうならないために、たえず脳が指示を出している。つまり頭を使っているという意味で「頭が良くなる」という効果はあるかもしれません。

 

ちなみに私の運営するスイミングスクールは、もともと東京の浅草周辺で始めました。全国的に有名な難関学校が近いこともあって、勉強がものすごくできる教え子もたくさんいました。水泳をしたから勉強がものすごくできたのか、水泳をしなくてももともとできた子だったのか。

 

こういった類の話は推測の域を出ませんが、子どもたちの成長には間違いなくプラスになっていたと思います。

 

 

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