就職氷河期世代を巡る問題は多い。既に顕在化している経済的問題と、生活が厳しいなかで「親の介護」が始まるという近い未来の問題。そしてさらに時が進めば、「自身の高齢化」へとシフトしていく。一体、どれほどの問題に直面するのか…。日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏が指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
退職金や年金は減る一方…「就職氷河期世代」の老後に迫りくる困難 (※写真はイメージです/PIXTA)

【関連記事】40代で手取り10万円台も…「就職氷河期世代」を取り巻く厳しい現実

「老後の備え」「退職金」「年金」が軒並み減少

本記事では、20年後以降の長期的な視野での問題についてみてみる。就職氷河期世代をはじめとする下の世代の老後への備えは、上の世代と比べて明らかに脆弱であり、現時点の老後に備えての貯蓄も十分ではないとみられる。

 

今後を見据えても状況の好転は見込みにくい。例えば、正規雇用者を中心とする定年退職による退職給付については、厚生労働省「就労条件総合調査」などによると、給付額は1990年代後半には3000万円前後あったが、それをピークに足許では2000万円前後まで減り続けている。

 

それだけでなく、給付制度がある企業数もかつてと比べて減少している。世界的な競争の激化などを背景に、企業を取り巻く経営環境が厳しくなっていることを踏まえれば、この先、退職金が上の世代と比べて大幅に増えることは考えにくい。

 

また、厚生年金についても上の世代と比べて減額が見込まれる。例えば、妻が専業主婦である世帯を想定したやや古いデータになるが、平均年収480万円世帯における90歳までの年金総支給額(物価動向を考慮した現在価値に換算)は、団塊ジュニア世代がバブル世代より▲200万円、新人類(後期)より▲400万円強、新人類(前期)より▲700万円強も少ないと試算されている。

 

また、ポスト団塊ジュニア世代(前期)では、バブル世代より▲400万円弱、新人類(後期)より▲600万円、新人類(前期)より▲900万円少ないと試算されている(ダイヤモンド社 ザイ・オンライン、2015年3月13日「平均年収750万円以上の人がはまる罠!『年収が多い人ほど年金が多い』はウソ」)。

 

一方で、非正規雇用においては、退職金が支給されない、厚生年金も正社員と比べて少額というケースが多い。

 

このような状況が懸念される就職氷河期世代の老後を支える家族は一体誰になるだろうか。