●自民党総裁選で岸田氏が新総裁に、結果は引け後まもなく判明し日経225先物は上昇で反応。
●岸田氏は新しい日本型資本主義を目指し成長戦略と令和版所得倍増のため分配施策を提唱。
●日本株の一段高には新規好材料が必要、長期政権のへカギは内閣支持率や来年夏の参院選。
自民党総裁選で岸田氏が新総裁に、結果は引け後まもなく判明し日経225先物は上昇で反応
自民党総裁選は9月29日の午後2時過ぎに投票結果が発表され、岸田文雄氏が256票、河野太郎氏が255票、高市早苗氏が188票、野田聖子氏が63票を獲得しました。過半数を獲得した候補がいなかったため、直ちに岸田、河野両氏による決選投票に移り、岸田氏が257票、河野氏が170票を獲得し、岸田氏が新総裁に選出されました。岸田氏は10月4日召集予定の臨時国会で第100代内閣総理大臣に指名されることになります。
岸田氏の勝因は、第1回投票と決選投票で、多くの国会議員票を獲得したことだと思われます。なお、日経平均株価の動きに目を向けると、前日の欧米株の下落を受け、朝から大きく値を下げていました。岸田、河野両氏が決選投票に進むという報道に下げ幅を拡大しましたが、決選投票が始まると買い戻しが優勢となりました。決選投票の結果は引け後まもなく判明し、日経225先物は上昇で反応しました(図表1)。
岸田氏は新しい日本型資本主義を目指し成長戦略と令和版所得倍増のため分配施策を提唱
ここで、改めて岸田氏の考え方や政策を整理します。岸田氏は、成長と分配の好循環による「新しい日本型の資本主義」構築が必要であるとし、「国民を幸福にする成長戦略」と「令和版所得倍増のための分配施策」を提唱しています(図表2)。
成長戦略では、5Gの早期展開など、地方におけるデジタル・インフラの整備や、再生可能エネルギーだけでなく原発再稼働などを含む「クリーン・エネルギー戦略」を掲げています。
分配施策では、中間層の拡大に向け、住居費・教育費の支援強化、看護や介護などの公的価格の抜本的見直しを打ち出しており、また、所得が1億円を超えると所得税負担率が低下する「1億円の壁」を打破するため、金融所得課税の見直しに取り組む考えを示しています。ただ、高所得者層向けの増税や、中低所得者層向けの巨額支援といった極端なものではないことから、比較的マイルドな分配施策といえます。
日本株の一段高には新規好材料が必要、長期政権のへカギは内閣支持率や来年夏の参院選
金融政策については、物価安定の目標を2%とする現在の金融緩和を維持する方針です。財政政策については、年内に数十兆円規模の経済対策を策定すると表明しており、短期的には財政拡張を容認する模様です。また、消費税は10年程度上げることは考えないとする一方、財政再建の旗は降ろさないと明言しています。以上より、目先は景気支援型の政策が継続される見通しで、この点は株式市場にとって安心材料です。
ただ、自民党の新総裁が選出され、与党が衆院選で大きく議席を減らすことはない、というところまで相場には織り込み済みとみられます。政局関連で日本株が一段と上昇するには、衆院選での与党圧勝や、目玉となる経済対策の公表など、まだ織り込まれていない目新しい好材料が必要です。また、一般に、日本株にとっては長期政権が望ましいとされるため、今後は岸田新内閣の支持率や2022年7月の参院選が一層注目されると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『自民党新総裁に岸田文雄氏~今後の日本株への影響を考える』を参照)。
(2021年9月30日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト